リンパ浮腫

乳がんや子宮癌手術後の腕や脚のむくみ、お困りになっていませんか?

がんの治療では様々な治療法が行われますが、「リンパ浮腫」という腕や脚のむくみを引き起こすことが分かっています。体の中には、動脈と静脈のほかにリンパ管と呼ばれる管があります。リンパ管は、全身の皮膚のすぐ下に網目状に張り巡らされていて、このリンパ管の中にはリンパ液という液体が流れています。

リンパ浮腫とは、異常に貯留したリンパ液により浮腫をきたす疾患のことで、明らかな原因がなく発症する原発性リンパ浮腫と、がん切除後などに発症する二次性リンパ浮腫があります。日本においてはがん治療後の二次性リンパ浮腫が多くを占めています。日本においては、10〜15万人のリンパ浮腫患者がいると言われています。

二次性リンパ浮腫は、婦人科がん(子宮がん、卵巣がん)や乳がんなどの治療のためにリンパ節郭清、センチネルリンパ節生検、放射線照射を受けた場合、治療後に下肢や上肢のむくみとして自覚されます。脚や腕の付け根にあるリンパ節が傷害されたために、リンパ液が体幹に戻れなくなって脚や腕に貯まってしまった状態です。リンパ浮腫ではリンパ流のうっ滞により局所免疫能が低下し感染・炎症を生じやすくなります。外傷などの明らかな原因がなくとも、体調がすぐれない時などに患肢が熱をもち赤くなる蜂窩織炎を生じやすくなり、それ以降さらに蜂窩織炎を発症しやすくなる、という悪循環になります。

当院では、これまで治療が難しかったリンパ浮腫、リンパ関連疾患を、超微小外科技術、また再生医療技術なども用いることで、治療を目指しております。特に外科的治療においてはこれまで1000例以上の症例経験の豊富な医師が担当しております。すぐに受診ができますので、お気軽にお問い合わせください。

症状

  1. 浮腫:一般的には下肢や上肢などの末梢部位によく現れますが、顔や頸部、体幹部にも発生することがあります。
  2. 重さや不快感: 腫れた部位が重く感じたり、不快感を引き起こすことがあります。日常の動作や運動が制限されます。
  3. 皮膚の変化: 浮腫した部位の皮膚は硬くなり、凹凸や陥没した外観を呈することがあります。
  4. 感染のリスク: 浮腫した部位の組織は脆弱になり、蜂窩織炎などの感染症のリスクが高まります。

外科的治療

従来から行われている保存療法としては、患肢挙上、安静、生活指導、利尿剤などの薬物投与、空気圧マッサージや弾性ストッキングを用いた治療があります。ただ、リンパ浮腫の患者さんたちは弾性ストッキングなどの圧迫療法や安静以外に有効な方法がないという状況に長らく置かれてきました。こういった理学療法は有効ですが、暑い夏でも分厚い弾性ストッキングを履く必要があります。また、根本的な解決策ではないため、リンパ浮腫の悪化は止めることはできませんでした。

このリンパ浮腫に対して、静脈を利用して、脚や腕からリンパ液を静脈に戻すリンパ管細静脈吻合術(LVA)という手術があります。脚や腕の皮膚を2~3cm切開して太さ0.5mm前後のリンパ管を探し、顕微鏡で見ながら近くの静脈につなぎます。

リンパ管静脈吻合術(LVA:Lymphaticovenular anastomosis)

この手術法は、足のむくんだ部分のリンパ管を静脈に吻合することで、うっ滞したリンパ液を中枢方向へ流そうという方法です。0.5 mm程度の細いリンパ管を手術用顕微鏡の下で静脈に吻合するので高度な技術を必要としますが、1か所が3cm程度の傷で済むため負担の少ない手術です。
正確な手術を行うために、当院では術前にICG蛍光リンパ管造影によるリンパ管のマッピングを行い、できる限り状態の良いリンパ管を見つけておきます。吻合に用いる手術器具や針糸なども専用の繊細なものを使用するため、スーパーマイクロサージャリーと呼ばれる手技が必須となります。

リンパ移植(Lymph Transfer)

健常な部分(主に胸背部)からリンパ組織を患肢に移植します。リンパ管が荒廃していて、リンパ管静脈吻合では効果が得られないような場合に、適応になります。

脂肪吸引(Liposuction)

リンパ管環流の阻害要因となっている脂肪を吸引し除去することで、浮腫の軽減と共に、リンパ液の排出をスムーズにします。

外科治療に関係する研究成果

Yoshida S, Koshima I, Imai H, Uchiki T, Sasaki A, Fujioka Y, Nagamatsu S, Yokota K, Harima M, Yamashita S, Tashiro K. Characteristics and outcomes of lymphaticovenular anastomosis in older patients with bilateral involvement versus younger patients with unilateral involvement in lower extremity lymphedema. J Vasc Surg Venous Lymphat Disord. 2019 Dec 13. 

Yoshida S, Koshima I, Imai H, Sasaki A, Fujioka Y, Nagamatsu S, Yokota K, Harima M, Yamashita S, Tashiro K. Indocyanine Green Lymphography Findings in Older Patients with Lower Limb Lymphedema. The Journal of Vascular Surgery. J Vasc Surg Venous Lymphat Disord. 2020 Mar;8(2):251-258.

Tashiro K, Arikawa M, Kagaya Y, Kobayashi E, Kawai A, Miyamoto S. Flap reconstruction after groin and medial thigh sarcoma resection reduces the risk of lower-extremity lymphedema. J Plast Reconstr Aesthet Surg. 2019 Jan 12. pii: S1748-6815(19)30030-0. doi: 10.1016/j.bjps.2019.01.009. Epub 2019 Jan 12.

Tashiro K, Yamashita S, Narushima M, Koshima I, Miyamoto S. Hemi-Intravascular Stenting for Supermicrosurgical Anastomosis. Plast Reconstr Surg Glob Open. 2017 Nov 20;5(11):e1533. 

Tashiro K, Yamashita S, Koshima I, Miyamoto S. Visualization of Accessory Lymphatic Pathways in Secondary Upper Extremity Lymphedema using Indocyanine Green Lymphography. Annals of Plastic Surgery. 2017 Oct;79(4):393-396.

Tashiro K, Feng J, Wu SH, Mashiko T, Kanayama K, Narushima M, Uda H, Miyamoto S, Koshima I, Yoshimura K. Pathological changes of adipose tissue in secondary lymphedema. Br J Dermatol. 2017 Jul;177(1):158-167.

Tashiro K, Shibata T, Mito D, Ishiura R, Kato M, Yamashita S, Narushima M, Iida T, Koshima I. Indocyanine Green Lymphographic Signs of Lymphatic Collateral Formation in Lower Extremity Lymphedema after Cancer Resection. Annals of Plastic Surgery. 2016 Aug;77(2):213-6

Tashiro K, Yamashita S, Saito T, Iida T, Koshima I. Proximal and distal patterns: Different spreading patterns of indocyanine green lymphography in secondary lower extremity lymphedema. J Plast Reconstr Aesthet Surg. 2016 Mar;69(3):368-75

手術のリスク

どんな手術にもリスクはありますが、リンパ管静脈吻合(LVA)は比較的リスクが少ない手術と言えます。皮下の浅層を操作する手術ですので、軽度な切り傷と同等の侵襲性と言えます。慣れている術者が繊細に手術することで、必要なリンパ管のみを操作し、その他のリンパ管や神経は温存することで、機能的にはほとんど悪影響を与えることなく手術を終了することができます。一般的な手術のリスクとして、瘢痕、創離解、出血、しびれなどの神経障害、感染などが挙げられます。

再生医療

当院では、再生医療の技術を用いたリンパ管・血管の再生によるリンパ浮腫治療にも力を入れております。脂肪の中に存在する幹細胞が放出するエクソソームによるリンパ管新生・血管新生によりリンパ浮腫の改善を図ります。

研究成果

Extracellular vesicles from adipose-derived stem cells relieve extremity lymphedema in mouse models.

Tashiro, Kensuke MD1,2; Yoshioka, Yusuke PhD2; Ochiya, Takahiro PhD2

Plastic and Reconstructive Surgery ():10.1097/PRS.0000000000010388, March 08, 2023. | DOI: 10.1097/PRS.000000000001038

PIA株式会社との共同研究

PIA株式会社と共同研究を行い、高品質で、安心安全なエクソソーム(Extracellular Vesicles: EV)の開発に関わり、臨床応用を行なっています。

検査(ICG蛍光リンパ管造影法)

当院では、痛みが少なく、かつ被曝もない、ICG(インドシアニングリーン)とPDEカメラを用いた、ICG蛍光リンパ管造影法によるリンパ管機能の検査を行なっております。他の検査法である、リンパシンチグラフィーでは強い痛みが生じ、またCT検査では被曝の影響があります。

軽症のリンパ浮腫のICG蛍光リンパ管造影所見

重症のリンパ浮腫のICG蛍光リンパ管造影所見

日帰りLVA手術に関しまして

当院では、日帰りで保険適応のLVA手術を受けることができます。1000例以上のリンパ浮腫患者さんに関わってきました治療責任者が執刀し、日帰りでも安全で効果的な治療を受けることができます。歩いて帰っていただくことが可能で、当日からシャワーも浴びることができます。アクセスも良好な場所に位置していますので、都心や地方からも簡単にご来院いただけます。

治療責任者

全ての患者様に対して、日本形成外科学会専門医・指導医である院長の田代絢亮が責任を持って、診療・治療に当たらせていただきます。これまで1000例以上のリンパ浮腫患者さんに関わってきた、リンパ浮腫治療のスペシャリストですので、どんなことでもお気軽にお問い合わせください。

治療例

受診方法

受診希望の患者様は、事前の電話もしくはLINEでの予約をおすすめしております。お気軽にお問い合わせください。

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