多形滲出性紅斑

  1. 多形滲出性紅斑(多形紅斑)とは?
  2. 多形滲出性紅斑の原因
  3. 多形滲出性紅斑の診断の仕方
  4. 多形滲出性紅斑の治療
    • 軽症の場合
    •  中等症の場合
    •  重症型の場合
  5. 多形滲出性紅斑になったときの注意点

1. 多形滲出性紅斑(多形紅斑)とは?

多形滲出性紅斑は、上肢や下肢を中心に赤い円形の盛り上がり(浮腫性紅斑)ができる病気です。多形紅斑とも呼ばれます。症状が重いときは、顔や体にも紅斑があらわれます。

この病気での紅斑の形は、弾丸の的のように二重~三重の同心円状となるのが特徴的です。次々に新しい紅斑ができるため、いろいろな時期の紅斑が混在し(多形)、周囲に向かってにじんで拡大(滲出)していきます。紅斑同士がくっついたり、紅斑の中央部に水疱ができたり、紫斑が生じることもあります。かゆみは出る場合と出ない場合があります。

皮膚だけに症状が限定されるタイプのほかに、全身症状を伴う重症型と呼ばれるタイプがあります。重症型では発熱を伴い、目の結膜が充血するほか、唇や口の中、陰部に水疱やただれ(びらん)を生じます。口や陰部に生じるこのような病変を粘膜疹といいます。

以前は重症多形滲出性紅斑として、スティーブンス・ジョンソン症候群や中毒性表皮壊死症といった疾患があると考えられてきました。しかし、最近の研究では、これらの疾患は多形滲出性紅斑重症型とは別のものだという見方が出てきています。この場合も皮膚症状に多形紅斑を伴うことがあるため、注意が必要です。

2. 多形滲出性紅斑の原因

多形滲出性紅斑の原因は、さまざまな因子に対する免疫アレルギー反応です。

単純ヘルペスウイルスやマイコプラズマ、溶連菌などの病原微生物への感染をきっかけに発症する場合のほか、薬剤に対するアレルギー反応(薬疹)として発症するケースが多いです。そのほか、食物の影響や別の疾患に伴って発症することもあります。様々な要因が絡み合っていることもあり、はっきりした原因が特定できないことも珍しくはありません。

3. 多形滲出性紅斑の診断

多形滲出性紅斑の診断にあたっては、診察で皮膚の状態を見ていきます。外見だけでの判断が難しいケースでは、数日経って紅斑の様子が変化してから診断がつく場合もあります。重症型でないかの判断のため、紅斑の範囲、発熱や粘膜疹の有無を見極めていきます。原因を探るため、感染症にかかっているかどうか、薬を服用しているかどうかを聞き取ります。

鑑別診断として、蕁麻疹、蕁麻疹様紅斑、Sweet病、水疱性類天疱瘡、水疱型エリテマトーデス、薬疹などが挙げられます。判断が難しい場合には、皮膚生検を行うことがあります。皮膚生検とは、患部の一部をメスなどで切除し、特殊な処理を施し、顕微鏡で観察して調べる検査です。

原因の特定のため、採血を行う場合もあります。血液検査によって炎症の度合いを調べたり、単純ヘルペスウイルスやマイコプラズマ、溶連菌などの感染の有無を調べることができます。

薬剤アレルギーが疑われる場合は、パッチテストを行うほか、採血した血液を使って薬剤誘発性リンパ球刺激試験(drug lymphocyte stimulation test : DLST)という検査を行います。

4. 多形滲出性紅斑の治療

紅斑が広範囲にみられる中等症の場合や、発熱や粘膜疹のある重症型の場合は、入院治療が必要なこともあります。そうでなければ、外来で治療していきます。

薬剤アレルギーが疑われる場合は、原因として疑わしい薬剤の使用を中止します。単純ヘルペスウイルスの感染が原因となっているケースでは、いったん症状がおさまった後も再発を繰り返すことがあります。この場合は、抗ヘルペスウイルス薬であるゾビラックス錠/顆粒(アシクロビル)、バルトレックス錠/顆粒(バラシクロビル塩酸塩)、ファムビル錠(ファムシクロビル)などの予防的な内服が検討されます。()で示したのは薬品の成分名です。

4-1. 軽症の場合

部分的な紅斑にとどまる軽症例では、副腎皮質ステロイドの外用薬や、抗アレルギー薬の内服で治療を行います。

ステロイド外用薬の例としては、アンテベート軟膏/クリーム(ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル)、リンデロン-DP軟膏/クリーム(ベタメタゾンジプロピオン酸エステル)、ネリゾナ軟膏/ユニバーサルクリーム/クリーム(ジフルコルトロン吉草酸エステル)などがあります。

内服の第二世代抗ヒスタミン薬では、アレグラ錠/OD錠/ドライシロップ(フェキソフェナジン塩酸塩)、アレジオン錠/ドライシロップ(エピナスチン塩酸塩)、アレロック錠/OD錠/顆粒(オロパタジン塩酸塩)、デザレックス錠(デスロラタジン)、ビラノア錠(ビラスチン)などを使用します。

4-2. 中等症の場合

紅斑の範囲が広い場合や、水疱形成、ただれ(びらん)が見られる場合は入院して治療を行うことがあります。

軽症例と同様、ステロイド外用薬や抗アレルギー薬、抗ヒスタミン薬の内服で治療をします。

外用薬では強めのステロイド外用薬であるダイアコート軟膏/クリーム(ジフロラゾン酢酸エステル)、デルモベート軟膏/クリーム(クロベタゾールプロピオン酸エステル)のほか、マイザー軟膏/クリーム(ジフルプレドナート)、トプシム軟膏/クリーム(フルオシオノニド)などが使われます。

また、抗ヒスタミン薬とステロイドの合剤であるセレスタミン配合錠(ベタメタゾン・d-クロルフェニラミンマレイン酸塩)などの内服も使われます。

4-3. 重症型の場合

発熱や粘膜疹を伴い、全身症状のある重症型では入院治療が原則です。目の充血を伴う場合は、眼科と連携して治療を行うこともあります。

ステロイド内服薬であるプレドニン錠/散(プレドニゾロン)などを高用量で使用し、全身治療を行います。この時には消化器系の副作用を抑えるため、胃粘膜を保護するムコスタ錠(レバミピド)、セルベックスカプセル/細粒(テプレノン)などの胃薬が併用されることもあります。

並行して、軽症や中等症でも使われる抗アレルギー薬、抗ヒスタミン薬も使用していきます。

多形滲出性紅斑重症型とみられていた症状の方で、治療をしていくうちにスティーブンス・ジョンソン症候群や中毒性表皮壊死症といった疾患であるとわかるケースがあります。これらの病気は肺炎や腎不全に発展して死に至る場合があるほか、後遺症で目の障害が起こることもあります。こういった兆候を見のがさないためにも、入院治療が大切になります。

5. 多形滲出性紅斑になったときの注意点

重症型では入院治療も必要になる病気です。この記事で説明されたような特徴的な紅斑が出た場合、特に発熱や口の中・陰部の水疱を伴うような場合は、速やかに皮膚科を受診してください。

一般皮膚科

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