帯状疱疹

  1. 帯状疱疹とは
  2. 帯状疱疹の原因
  3. 帯状疱疹の診断
  4. 帯状疱疹の治療
  5. 予防ワクチン
  6. 帯状疱疹になった時の注意点
  7. 品川区の助成制度

1. 帯状疱疹とは

帯状疱疹は、激しい痛みと水ぶくれを伴う赤い発疹が生じる症状です。初めに皮膚にピリピリ、ズキズキ、チクチクといった神経痛のような痛みが起こり、その後数日から一週間で、水ぶくれ(水疱)と赤い発疹(紅斑)が出てきます。

症状は主に体の左右どちらかの側に偏ってあらわれ、しばしば日常生活が困難なほどの激しい痛みを伴います。また、かゆみや痺れを伴うケースもあります。特に首から上の帯状疱疹では、重症時に失明や顔面神経麻痺、難聴を引き起こす場合があります。

また、帯状疱疹による炎症が原因で神経が傷つき、発疹が消えた後も慢性の痛みが残ることがあります。これを帯状疱疹後神経痛と呼びます。できる限り早く医療機関を受診し、重症化や合併症を防ぐことが重要です。

2. 帯状疱疹の原因

帯状疱疹の原因となるのは、水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV:varicella zoster virus)です。日本の成人のおよそ9割は、このウイルスを持っていると推定されます。

水痘・帯状疱疹ウイルスは、水ぼうそうを引き起こすウイルスでもあります。小児期などの初感染時に水ぼうそうを発症した後に、ウイルスは知覚神経に沿って潜伏し、顔面の三叉神経や、脊髄の神経、坐骨神経などの神経細胞に残ります。

無症状の状態が長時間続くのですが、体の免疫が低下したタイミングで、水痘・帯状疱疹ウイルスは活性化します。活性化したウイルスは神経を伝って皮膚にあらわれ、帯状疱疹の症状が出てきます。

加齢や疲労、ストレスのほか、他の重病の発症などがきっかけになって帯状疱疹を発症するケースが多いです。50歳以上になると発症率が高くなり、日本人は80歳までに約3人に1人が帯状疱疹になるとも言われています。

3. 帯状疱疹の診断

発症の経緯の聞き取りや、発疹の様子、神経痛などの症状を詳しく聞きます。その他には、水痘・帯状疱疹ウイルス抗原キットのデルマクイックVZVを使用して検査することもできます。綿棒で水疱の内容物やびらん面の粘液を採取することで、専用のキットで短時間での判定が可能です。陽性一致率93.2%、陰性一致率98.8%と感度・特異度ともに高い検査です。

4. 帯状疱疹の治療

帯状疱疹の治療においては、原因である水痘・帯状疱疹ウイルスの増殖を抑える抗ウイルス薬と、痛みを抑える鎮痛薬が使用されます。また、症状によっては塗り薬を使う場合もあります。

多くの帯状疱疹では外来での治療が可能ですが、重度の発疹があったり、免疫不全者や高齢者など重症化や合併症のリスクが高い例では入院治療をする場合もあります。

帯状疱疹に有効な抗ウイルス薬には、アメナリーフ錠(アメナメビル)、ファムビル錠(ファムシクロビル)、ゾビラックス点滴/錠/顆粒/軟膏/クリーム/眼軟膏(アシクロビル)、バルトレックス錠(バラシクロビル塩酸塩)アラセナ-A点滴/軟膏/クリーム(ビダラビン)があります。()で示したのは薬品の成分名で、ジェネリック医薬品ではこちらの名前になっていることが多いです。

抗ウイルス薬の投与は7日ほど行います。

痛みを抑える処方は、発疹が出ている時期の末梢神経障害性の痛みと、発疹が引いた後の帯状疱疹後神経痛で異なる場合があります。基本的には内服薬を使いますが、重症の場合は注射薬を用いるケースもあります。

発疹が出ている時期には、抗炎症薬のカロナール錠/細粒/坐剤/シロップ(アセトアミノフェン)や、非ステロイド性抗炎症薬であるロキソニン錠/細粒(ロキソプロフェンナトリウム水和物)、ボルタレン錠/カプセル/坐剤(ジクロフェナクナトリウム)などが有効です。

発疹が出ている時期から引いた後の帯状疱疹後神経痛にまで有効な薬としては、疼痛治療薬のリリカカプセル(プレガバリン)、タリージェ錠(ミロガバリン)などがあります。ほかに、神経痛にも効果のある抗うつ薬のトリプタノール錠(アミトリプチリン)やサインバルタカプセル(デュロキセチン)などが処方されることも珍しくありません。

その他の帯状疱疹後神経痛に使われる薬としては、鎮痛薬のノイロトロピン錠(ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液)や、慢性疼痛に適応のあるワントラム錠(トラマドール塩酸塩)などがあります。末梢神経障害の治療目的で、ビタミンB12製剤のメチコバール錠(メコバラミン)を使うケースもあります。

痛みを内服薬でコントロールするのが難しい場合は、神経ブロック、硬膜外ブロックといったブロック治療が検討されます。

5. 帯状疱疹の予防

帯状疱疹は、ワクチンで予防することができます。予防接種の対象となるのは、帯状疱疹の発症率が高くなる50歳以上の方です。現在は、以下に示す2種類の帯状疱疹ワクチンがあります。

どちらのワクチンも任意接種であり、保険適用外のため、接種費用は全額自費になります。ただし、自治体によってはワクチン接種にかかる費用の一部を助成してくれる場合もあります。

5-1. 乾燥弱毒生水筒ワクチン

乾燥弱毒生水痘ワクチン「ビケン」は、2016年に帯状疱疹予防用ワクチンとして認可されました。製剤としては、以前から使われている小児の水ぼうそう予防の水痘ワクチンと同一のものです。これは、病原性を弱めた水痘・帯状疱疹ウイルスを使用した生ワクチンです。1回の接種で、免疫を獲得できます。

このワクチンでは、帯状疱疹の発症が50%、重症度は1/3に抑えられると報告されています。ただし、高齢になるほど予防効果は低下する傾向があります。また、ステロイドを含めた免疫抑制剤を使用している方や、病気で免疫機能が低下している方には使用できないため、注意が必要です。

こちらのワクチンを選択するメリットとしては、接種が一度で済むことと、接種費用が比較的安価であることがあります。自費で接種する場合、一般的には7,000円から10,000円程度の費用がかかります。

5-2. 乾燥組換え帯状疱疹ワクチン

乾燥組換え帯状疱疹ワクチンであるシングリックス筋注用は、水痘・帯状疱疹ウイルスそのものを使う生ワクチンとは異なり、ウイルスの表面に存在する糖タンパク質を抗原とした、世界初の組換えサブユニットワクチンです。

すでに水痘・帯状疱疹ウイルスに対する免疫を持っている人に対して接種することで、ウイルス表面の糖タンパク質に対する免疫反応を強化し、帯状疱疹予防効果を発揮します。ですので、水ぼうそうの予防ワクチンとしては使えません。

免疫獲得のためには、2か月間隔で2回の接種が必要になります。

シングリックスの帯状疱疹発症予防効果は高く、50歳以上で97.2%、70歳以上で89.8%の有効性が臨床試験で報告されています。

また、シングリックスはステロイドを含めた免疫抑制剤の使用時や、免疫機能が低下する病気にかかっている場合でも使用できます。

シングリックスを選択するメリットは、予防効果の高さと免疫低下時でも接種ができることにあります。ただし、2回の接種が必要なことと、接種費用がやや高額になることが注意点となります。

6. 帯状疱疹になった時の注意点

帯状疱疹が出ているときは、疲れやストレスで免疫力が落ちています。残業や激しい運動は避け、栄養と睡眠をしっかりとることが大切です。

痛いからといって患部を冷やしてしまうと、痛みのもとになる物質が産生され、かえって悪化します。発疹が出ていても積極的に湯舟につかり、患部を温めてください。

帯状疱疹そのものは、ほとんど他人にうつりません。ただし、まだ水ぼうそうにかかったことのない人に接触すると、水痘・帯状疱疹ウイルスにより、相手が水ぼうそうになってしまう場合があります。発疹が治るまでは、赤ちゃんや幼児、妊産婦の方への接触は避けたほうが良いでしょう。

帯状疱疹の強い痛みは、持続することで脳に記憶され、痛みに敏感になってしまったり、痛みの原因がなくなった後にも痛みを感じるといった状態の原因になります。ですので、痛みは我慢することなく、医師の指示にしたがって積極的に鎮痛剤を使ってください。

7. 品川区の助成制度

令和5年7月1日より、帯状疱疹ワクチン予防接種の一部費用が助成される制度が開始されます。
対象の方は、接種日時点で50歳以上の品川区民の方のみとなります。

帯状疱疹は、水ぼうそうと同じウイルスで起こる皮膚の病気で、ウイルスに対する免疫は加齢とともに弱まり、80歳までに約3人に1人が発症するといわれています。
また、疲労やストレスなども発症のきっかけになることから、コロナ渦で帯状疱疹の患者が増えているという報告もございます。ワクチン接種により免疫を強化・発症を予防または軽症に抑える効果が期待されます。

帯状疱疹ワクチンは2種類ございますが、当院では不活化ワクチン(シングリックス)の接種を推奨しております。詳しくはご来院にてご相談ください。
また、ご予約も受け付けておりますので、電話やLINEからお問い合わせくださいませ。

助成の受け方や注意点等は、品川区ホームページ「帯状疱疹ワクチン予防接種費用一部の助成」をご確認ください。

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