熱傷

  1. 熱傷とは?
  2. 原因
  3. 3. 重症度評価
    • I度熱傷
    • II度熱傷
    • III度熱傷
  4. 4. 治療
    • 初期治療
    • 外用療法
    • 抗生剤加療
    • 重症例への全身管理、外科手術 
  5. 5. 注意点

1. 熱傷とは?

熱傷は、日常的に遭遇することが多く、いわゆるやけど(火傷)を指します。狭義では、熱によって皮膚や粘膜の障害された状態を意味します。広義には低温熱傷、化学薬品や電流による組織損傷も含めます。深達度が浅い場合はきずあとは残りにくいですが、深い場合は瘢痕拘縮などにより整容面や機能面で障害を残す場合があります。受傷直後に、ご家庭でしていただく適切な初期治療と医療機関への早期受診が極めて肝要です。

2. 原因

沸騰させたお湯、天ぷら油、熱い飲み物や食べ物といった高温の液体に曝露されることが原因です。小児では、炊飯器やポットの蒸気に手を出してしまったり、熱い食べ物をこぼしてしまう例などがよくあります。また、高齢者では感覚が低下しており、熱い浴槽に気づかずに入ってしまったり、湯たんぽや使い捨てカイロなどでの低温熱傷などがよくあります。

3. 重症度評価

熱傷は、その深さと面積で重症度を評価します。深さによって、I度からIII度まで分類されます。成人では手掌法や9の法則、小児では5の法則を用いて面積を判定します。小児や高齢者、糖尿病や喫煙歴のある方は創部が経過とともに悪化することがあり、慎重に経過をみていく必要があります。範囲の広い熱傷や、顔面、手、関節、会陰部などの特定部位の熱傷は、機能面や整容面で問題となる場合が多く、専門の医師による診察をおすすめします。

3-1. I度熱傷

表皮のみの傷害で、基本的には日焼けのような赤みが出る程度です。外見上、皮膚は乾燥したようになり、痛みを伴います。通常数日で瘢痕なくなおります。

3-2. II度熱傷

真皮までの傷害で、水疱(水ぶくれ)ができるのが特徴です。II度熱傷の中にも、その深達度で浅達性Ⅱ度熱傷と深達性Ⅱ度熱傷に分けられます。浅達性Ⅱ度熱傷は通常、薄赤い色調で、知覚は保たれていることが多いですが、強い痛みを伴うことがあります。一方、深達性Ⅱ度熱傷はやや白色を呈し、知覚は鈍く、痛み自体は感じにくいことが多いです。経過としては数週間で治癒し、浅達性Ⅱ度熱傷は一般に瘢痕を残さないですが、深達性Ⅱ度熱傷は肥厚性瘢痕などに至る場合があります。

3-3. III度熱傷

皮下の脂肪や筋肉にまで傷害が及んだものを指します。皮下の神経や血管が損傷しているため、患部自体に痛みがなく、表面からは蒼白に見えたり、火炎で受傷した場合は炭化したように黒くみえます。広範囲の場合は、熱傷性ショックなどを呈し、集中治療などの全身管理が必要となる場合があります。数ヶ月程度の治療期間を要し、肥厚性瘢痕や瘢痕拘縮、治療過程での組織欠損などが残る場合があります。

4. 治療

熱傷は組織への最初のダメージで経過が大きく決まります。特にご家庭で最初に取り組んでいただく、初期治療は非常に重要です。

4-1. 初期治療

熱傷となった場合、すぐに熱源を断ち、流水で冷やすことが重要です。患部が小範囲であれば大量の水道水で、広範囲であればシャワーで最低5分、可能であれば20-30分程度は流して冷却します。小児の場合、過度な冷却による低体温性の不整脈に気をつけます。

4-2. 外用療法

創部管理の基本は適度な湿潤に保つことです。さまざまな被覆剤や外用薬があり、創部の状況によって選択していきます。

I度熱傷や浅達性Ⅱ度熱傷まででは、アズノールなどの非ステロイド性抗炎症軟膏、リンデロンVやロコイドなどのステロイド系軟膏、経過をみて白色ワセリンの使用を行います。深達性Ⅱ度熱傷やIII度熱傷だと白色ワセリン、壊死組織がある場合はゲーベンクリーム、潰瘍形成があり滲出が多い場合はカデックス、慢性期で壊死組織が少ないものはプロスタンディンやアクトシンを、被覆剤に塗布して創部に使用します。染み出しの多さに応じて、ハイドロコロイドドレッシング、ハイドロファイバー、ポリウレタンフォームや非固着性ガーゼなどの適切な被覆剤を選択していきます。また、bFGF製剤(フィブラスト)を早期から導入することで上皮化促進効果が期待できることも知られています。

感染を伴う創部の場合は、なるべく滲出液がドレナージされるような被覆方法に変え、軟膏もイソジンシュガーパスタやゲーベンクリームなどの抗菌作用のあるものに変更していくことがあります。

また、創部洗浄も重要です。受傷後は、少なくとも1日1回の創部洗浄を行います。シャワーや洗面台などで流水を用いて、古い外用薬をしっかり洗い流し、新しいものが当てていきます。被覆剤を無理にはがしたり、創部を強くこすると、水疱が破れたり、上皮化を促されている細胞が流れてしまったりします。被覆剤は水をかけながらゆっくり剥がしましょう。また、水疱は自然に破れてしまっても問題ありませんが、早期の治癒には中身だけ抜いて水疱蓋を残すことが有効です。ご家庭では、次の受診まで、水疱はできるだけ破らずにしておきましょう。

4-3. 抗生剤加療

創部が感染を伴う場合は、内服や点滴で抗生剤加療を行います。

4-4 重症例への全身管理、外科手術 

範囲の広い熱傷では、創部から不感蒸泄で脱水に陥りやすくなっています。入院の上、適切な補液管理が必要となります。感染を伴うII度熱傷やIII度熱傷などでは、原則としてできるだけ早く壊死組織を除去します。早期に植皮術などの検討する必要があることもあり、瘢痕拘縮となってしまったら、形成術を行います。

5. 注意点

熱傷は、「まず流水で冷やす!」という、ご家庭での初期治療が極めて重要です。しかし、巷には治療のエビデンスのない民間療法の情報が溢れており、それを実践して逆に悪化させてしまうケースもあります。また、受傷した後も痛みがないことが逆に深い受傷を意味する場合があります。熱傷は放置せずに、適切な初期治療の後に早めに当院を受診してください。

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