男性型脱毛症(AGA)

  1. 男性型脱毛症(AGA)とは?
  2. 原因
  3. 進行度分類
  4. 治療
    • 生活指導
    • 外用薬
    • 注入療法
    • 植毛
  5. 注意点

1. 男性型脱毛症(AGA)とは?

男性型脱毛症(AGA)は、額の生え際や頭頂部の毛髪が特に薄くなる進行性の脱毛症です。男性ホルモンが毛球の発育を抑制して、早くに脱毛を促されたり、細く短い毛髪が増えて、結果的に薄毛になってしまいます。主に中年以降の男性に多いとされていますが、若年男性や一部の女性でも症状が出ることがあります。進行性のため、「早期診断・早期治療」が肝要です。

2. 原因

男性ホルモンのひとつであるテストステロンは、5αリダクターゼという還元酵素によりジヒドロテストステロンに変わります。5αリダクターゼには2種類あり、I型は頭頂部や生え際にみとめられ、II型は全身に分布しています。このジヒドロテストステロンは毛乳頭にある受容体・アンドロゲンレセプターと結合することで、脱毛を促進する因子であるTGF-βが産生され、髪の毛を作り出す毛包の成長が抑制されます。ジヒドロテストステロン自体は胎生期における男性生殖器の成長や、思春期以降の前立腺の増大や、髭などの体毛の増加に寄与します。

毛髪は通常、成長期、退行期、休止期の3段階を経て、生え変わっていきます。なんらかの原因で、このジヒドロテストステロンが増加することで、通常2-6年程度ある成長期が数ヶ月程度に縮まってしまい、柔らかく細い髪の毛のうちに抜けてしまうことにつながります。

AGAの原因としては、酵素やホルモン活性の遺伝によるものと、血流悪化を招く生活習慣があります。

3. 進行度分類

AGAの進行度には、I-VIIの7つのタイプに分けたハミルトン・ノーウッド分類が知られています。額の生え際の薄毛具合を中心に、頭頂部や前頭部の所見を加えて分類されます。代表的なものには、額の左右が脱毛する(いわゆるM字型ハゲにあたる)I型・II型・III型、頭頂部が全体的に抜ける(いわゆるU字型ハゲにあたる)IIa型・IIIa型・IVa型、つむじの部分が抜けていく(いわゆるO字型ハゲにあたる)Ⅱ型vertex・Ⅲ型vertex・Ⅳ型があります。

4. 治療

治療の基本は、頭皮の血流改善や、ジヒドロテストステロンを抑える保存的加療です。それでも効果が乏しい場合は、保存的加療に並行して、注入療法や自毛植毛を行っていきます。厚生労働省や米国医薬品管理局(FDA)認可の治療も含まれてはいますが、基本的には保険収載はなく、自費診療となります。

4-1. 生活指導

生活習慣とAGAとの関係がまだ科学的に実証されてはいませんが、AGAの原因の一つとされる頭皮への血行増悪を改善するために、生活習慣改善を目指します。正しい洗髪、運動や禁煙、ストレスのない生活、睡眠の量と質の向上、節酒、バランスの取れた食事など、生活習慣の見直しは重要です。

4-2. 外用薬

頭髪の育毛を促進するミノキシジルを直接頭皮に塗布します。ミノキシジルは、もともと高血圧治療薬として使用されており、その血管拡張作用を応用して頭皮の血流を増加させます。毛髪における、休止期から成長期への誘導および成長期の延長効果により、発毛効果が期待されます。毎日欠かさず使用して、効果が実感できるようになる目安は約半年です。ミノキシジルの濃度によってはさらに早まる場合もあります。ミノキシジルには内服タイプもあります。

4-3. 内服薬

フィナステリド(プロペシア®︎)やデュタステリド(ザガーロ®︎)などの内服薬は、AGA進行抑制効果があり、治療の要となります。フィナステリドは5αリダクターゼのII型のみ、デュタステリドはI型・II型ともに抑制する効果があります。ともに副作用としては、性欲減退や勃起不全などが挙げられます。デュタステリドの方が強力な効果がある分、副作用も強く、日本皮膚科学会からもフィナステリドの方が推奨されています。連日使用を継続して、効果が実感できるようになるのに、少なくとも6ヶ月は経過をみていきます。女性の場合は、この2剤を服用できません。

他にも、ノコギリヤシ、亜鉛やd-リモネンなどの摂取などは、十分なエビデンスはありませんが、薄毛改善に効果があるといわれています。経過をみて使用する場合があります。

4-4. 注入療法

内服薬や外用薬と組み合わせて、直接発毛を促す因子を頭皮に注入する治療法で、メソセラピーやHARG療法があります。これらは、毛髪の成長を促すもので、AGA進行自体は止める効果はありません。メソセラピーは真皮に、髪の毛の成長を促す成分を注射します。注入する方法は、注射器、ローラー、電気パルスや炭酸ガス、レーザー照射など多岐に渡りますので、それぞれの方にあった方法を選択します。HARG療法は脂肪由来幹細胞から得られた成長因子を頭皮に注入します。月に1-2回の治療を半年〜1年継続し、効果を実感する目安としては約1-4ヶ月です。こうした治療法は、今後より普及していくことが見込まれますが、有効性が十分に検証されていないのが現状です。担当医とご相談の上、治療を進めましょう。

4-5. 植毛

薄毛の部分に毛髪を伴う皮膚組織を移植する治療法で、重度のAGAの方にとって有効です。人工の毛を植えたり(人工植毛)、自身の毛髪を皮膚組織ごと植えたり(自毛植毛)します。植毛した部分は半永久的な効果が見込めますが、内服や外用は中止してしまうと、植毛部以外が薄くなり違和感が出てしまいます。有用性自体は十分に検証されていませんが、治療自体は1箇所あたり1回ですみ、80%以上の生着率の報告もあります。

5. 注意点

男性型脱毛症(AGA)では年齢・性別問わず薄毛を引き起こすことがあります。早期診断・早期治療により進行を阻止したり、発毛を促すことができる可能性があります。薄毛で悩みが出てきたら、当院を受診してください。

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