ニキビ(尋常性ざ瘡)

ニキビとは

ニキビ(尋常性ざ瘡)

  1. ニキビとは?
  2. ニキビの原因
  3. ニキビの診断
  4. ニキビの治療法
    • BPO
    • アダパレン(ディフェリン)
    • 外用抗菌薬
    • 内服抗菌薬
    • BPO+クリンダマイシン
    • BPO+ディフェリン
    • ビタミン製剤
    • 漢方薬
  5. ニキビの自費治療
    • ダーマペン 
    • フラクショナルCO2レーザー
    • ポテンツァ
    • 顕微鏡下瘢痕形成術
    • ピーリング
    • 高濃度ビタミンC点滴
    • イオン導入
  6. 注意点

1. ニキビとは?

ニキビとは、尋常性ざ瘡とも言い、思春期や栄養不良、寝不足時などに好発する毛包脂腺系の炎症性疾患で、顔面や上背部によくできます。思春期の始まる12-14歳くらいから始まることが多く、男女差はないと考えられています。罹患する頻度は約95%ととても高くなっています。拡大する炎症を放置したり、適切な治療を受けないでいると、皮下に硬結を形成したり、皮膚にニキビ痕(瘢痕)を残すことがあります。この瘢痕の治療は保険の範囲内だと難しいことが多く、また治療期間も一般的に長く、高いコストがかかります。そのため、ニキビに対しては早期に治療を開始して、瘢痕を作らないようにすることが非常に大切です。

2. ニキビの原因

原因としては、皮脂分泌の亢進、男性ホルモンなどの影響、毛包漏斗部の角化異常・構造異常、皮膚常在菌(Cutibacterium acnes)の増殖と炎症の誘導という4つの因子が重要です。男性の場合は精巣、女性の場合は副腎や卵巣からデヒドロエピアンドロステロンが代謝されて男性ホルモンになり、皮脂分泌亢進に関与すると考えられています。また、毛包漏斗部で角層細胞が固着した貯留角化が起きるとニキビが発生しやすくなリマス。C.acnesは皮膚常在菌だが、自然免疫によって、IL-12、IFN-γなどの産生が起こり、炎症を生じると考えられます。これらの要因が複雑に絡み合い、毛包漏斗部の閉塞が起こり、毛穴が詰まった初期状態のニキビのことをコメドと言います。このコメドの状態が進展すると、詰まった毛穴の中でアクネ菌が増殖し、周囲に炎症を引き起こします。この状態がいわゆる赤ニキビで、炎症により周囲が赤くなります。

3. ニキビの診断

視診や問診などの臨床所見が重要になります。周囲への炎症の波及などを観察し、どの治療法が適しているかの判断が重要になります。最近になり、保険適応のニキビの治療薬の選択肢が増えています。ニキビの分類・段階に応じて、どの治療薬が最も適しているか、医師が判断いたします。また肌質や季節に合わせて、使うべき保湿剤の選択も重要になります。新生ニキビとニキビ痕が混在するような状態でも、どちらの病態も適切に医師が判断いたします。

4. ニキビの治療

ニキビの治療においては、保険で使える外用薬、内服薬の種類も多く、また自費診療の施術も選択肢に入りますので、まずはその病態をしっかりと診断した上で治療方針を決定することが重要になります。

特に炎症の強い急性期においては、感染を併発していることが大部分なため、抗生剤の内服・外用を行い、BPO製剤(べピオ:過酸化ベンゾイル)を使用することが求められます。急性炎症期を脱した後は、コメドを予防したり、コメドのうちに治療をすることが中心になるため、抗生剤を用いることをやめ、アダパレン(ディフェリンゲル)やべピオ、べピオ/アダパレン合剤などを治療の中心に据えます。維持期において良い状態をキープするために、ケミカルピーリングやイオン導入も効果的です。またニキビ痕に関しては、自費治療であるダーマペンやニードルRF、フラクショナルCO2レーザーなどが選択肢になります。

またどの期間においても、最も重要なこととして、生活指導やスキンケアがあります。十分な睡眠をとり、心身の健康を保ち、規則正しいバランスの取れた食生活にも心がけます。ポテトチップスやチョコレートなどある種の食品でニキビができやすい場合は、そういったものをある程度制限する必要もあります。食品添加物にも反応してニキビができやすい場合は、添加物不使用の食品を選ぶ必要があります。優しく洗顔をしたり、自分の肌に合ったスキンケア商品を選び、身の回りの服や寝具を清潔な状態に保つことも重要です。

4-1. BPO(べピオ:過酸化ベンゾイル)

べピオには、抗菌作用と角質剥離作用があります。急性炎症期にも維持期にも用いられます。漂白作用があるため、服や衣類、髪の毛などについた際はすぐに落とすようにします。塗布部のヒリヒリ感、紅斑などが強く出た場合は、保湿剤を併用します。まれにアレルギー性接触皮膚炎を起こすことがあるので、この場合は使用を中止します。

使用方法は1日1回夜に全顔に塗布します。塗り初めは、前述のヒリヒリ感が出ることがありますので、その場合、外用範囲をスポットにする、2日に1回など頻度を落とす、塗る時間を短くするなどの対策を取ります。

剤形としては、ゲルとローションがあり、ローションの方が、ピリピリとした刺激性が低く、使いやすくなっています。

4-2. アダパレン(ディフェリン)

ディフェリンは、ビタミンA誘導体で、角層の分化を正常化させ、毛穴が詰まるのを防ぐ作用があります。急性炎症期、維持期ともに用いられます。使用方法は1日1回夜に全顔に塗布します。塗り初めは、ヒリヒリ感が出ることがありますので、その場合、外用範囲をスポットにする、2日に1回など頻度を落とす、塗る時間を短くするなどの対策を取ります。ヒリヒリ感、紅斑が強い場合は、保湿剤も併用します。ビタミンA誘導体は催奇形性の報告があるため、妊婦や12歳以下の小児には用いないようにします。

4-3. 外用抗菌薬

主に使われる外用抗菌薬には、マクロライド系抗菌薬として、クリンダマイシン(ダラシン)、ニューキノロン系抗菌薬として、ナジフロキサシン(アクアチム)、オゼノキサシン(ゼビアックス)があります。どれも急性炎症期に用います。ダラシン、アクアチムは1日2回塗布、ゼビアックスは1日1回塗布です。薬剤耐性菌の問題があるので、維持期には使用しないようにします。

4-4. 内服抗菌薬

急性炎症期にの中でも炎症が特にひどい状態の際に用います。抗菌効果、抗炎症効果などを期待して使いますが、長期間の漫然とした使用は耐性菌の問題もあり、控えます。マクロライド系のルリッド、テトラサイクリン系のミノマイシン、ビブラマイシン、ニューキノロン系のクラビッド、ペネム系のファロムなどを用います。ミノマイシンは妊婦や8歳以下の小児には用いないようにします。

4-5. BPO+クリンダマイシン(デュアック)

デュアックはべピオとクリンダマイシンの配合剤で、両方の作用があり、主に急性炎症期の膿疱などに用いられます。配合剤は、各薬剤を塗る手間が省けるのが利点です。注意点や副作用はそれぞれの薬剤に準じます。

4-6. BPO+ディフェリン(エピデュオ)

エピデュオはべピオとディフェリンの配合剤です。両方の作用があり、急性期でも維持期でも用いられます。べピオのみもしくはディフェリンのみで、なかなか再発が抑えられない場合に、使用を検討します。作用が強力なので、ヒリヒリ感などの副作用の出現に注意します。注意点もそれぞれの薬剤に準じます。

4-7. ビタミン製剤

ビタミンB群、ビタミンC群はニキビの新生を予防する効果があります。これらの製剤を使用する際は、食事の状況も聴取し、ニキビの原因になりそうなものの摂取が多い場合は、まずそれらを中止にすることが効果的な場合もあります。

4-8. 漢方薬

ニキビ治療としての漢方薬は、万人におすすめできるわけではありませんが、以前使って調子が良かった人や、スタンダードな治療法をきっちり行ったのにニキビが治りにくい人などは試してみる価値があると思います。

■十味敗毒湯(ジュウミハイドクトウ)

抗炎症作用、抗酸化作用、皮脂分泌抑制作用など。炎症性のニキビによい適応。男性ホルモンの分泌を抑える効果もわかってきており、男性や若い世代のニキビにもよい適応。皮膚科学会ガイドライン推奨度C1。

■荊芥連翹湯(ケイガイレンギョウトウ)

蓄膿症や慢性鼻炎、炎症を伴うニキビなどがよい適応です。アレルギー体質で、粘膜や皮膚が外界の刺激に反応しやすい人に向いているお薬と言えます。皮膚科学会ガイドライン推奨度C1。

■桂枝茯苓丸加薏苡仁(ケイシブクリョウガンカヨクイニン)

鬱血、血行障害に伴う炎症に効果的で、肌荒れ、肝斑、ニキビ、頭痛、肩こり、めまい、生理痛などに有効とされます。特に月経前にできるニキビに有効で、更年期障害や冷えの治療のも用いられます。

■清上防風湯(セイジョウボウフウトウ)

皮膚から病因を発散し、炎症を鎮め、排膿を助けるといった作用があります。赤くて勢いのある炎症性ニキビに適応があります。皮膚科学会ガイドライン推奨度C1。

■柴苓湯(サイレイトウ)

ニキビ瘢痕に効くと言われます。作用として、内因性ステロイド様作用、免疫調整作用、線維芽細胞増殖抑制作用などがあり、瘢痕に関係する線維芽細胞の働きを抑制している可能性があります。

5. ニキビの自費治療

ニキビには、多種多様の自費治療があります。その中には、エビデンスに乏しいものや、効果の真偽が不明なものもあるため、ここでは代表的な自費治療に関して、ご説明いたします。自費治療の対象は大きく分けて、①ニキビ跡対策 ②肌の状態改善 に分かれます。ニキビ跡はクレーターなどとも呼ばれ、皮膚表面の凸凹が恒久化している状態です。保険治療内でクレーターを治すことは現状、有効な方法が乏しいです。自費治療には効果が認められる可能性が高いものがいくつかあります。

5-1. ダーマペン 

ダーマペンは、ニキビ跡に対する治療法です。ダーマペンは、微細な針を用いて皮膚表面に小さな穴を開けることで、皮膚の再生を促進し、ニキビ跡を改善します。穴を開けることで、皮膚で創傷治癒が起こり、新しいコラーゲンやエラスチンが生成されます。これにより、肌の弾力性が高まり、陥凹などのニキビ跡の改善効果が出ます。

5-2. フラクショナルCO2レーザー

フラクショナルCO2レーザーでは、CO2レーザー(炭酸ガスレーザー)を剣山のように小さく、数多く当てていきます。皮膚表面に細かい傷跡をつけるのですが、炭酸ガスレーザーを用いているため、出血することなく、創傷治癒を促すことが可能です。
傷を治そうとして皮膚の創傷治癒機転が働き、古くなった角質を除去し新しい皮膚へ入れ替えていきます。
また、ダメージを受けた皮膚は創傷治癒過程においてコラーゲンの新生・増殖が起こるので、肌の弾力が戻り皮膚を内側から若返らせることができます。

5-3. ポテンツァ

ニードルRFと呼ばれる仕組みで、針を用いて、真皮層に直接ラジオ波をの熱刺激を加えます。創傷治癒が促されることで、ニキビ跡を目立たなくします。

5-4. 顕微鏡下瘢痕形成術

より大きな傷跡、はっきりと目立つ傷跡は、傷の向きによっては、手術用顕微鏡を用いて傷を再度縫い合わせたり、ジグザグを入れることで、ニキビ跡を目立たなくすることができます。ニキビ跡の部位により、適用かどうかが決まり、また手術も高度な技術を必要とします。

5-5. ピーリング

皮膚表面の角質や真皮層に働きかけ、創傷治癒を促し、ニキビ跡を目立たなくします。比較的浅いニキビ跡に対して有効な方法です。

5-6. 高濃度ビタミンC点滴

ビタミンCは創傷治癒にも働き、肌の抗酸化力を高め、皮膚を若返らせる効果があります。高濃度のビタミンCを点滴で導入することで、飲むのと比べて大幅に高い濃度でビタミンCが全身に行き渡り、さまざまな効果を発揮します。

5-7. イオン導入

ビタミンCをイオン導入で直接皮膚に浸透させることで、より直接的に皮膚の抗酸化力を高め、創傷治癒を促します。

6. 注意点

ニキビはさまざまな原因でなってしまい、多くの人が悩まされています。皮膚科・美容皮膚科クリニックで適切な治療を受けることで、目に見えて改善することもありますので、独自の方法や民間療法などに頼らず、一度、医療機関を受診することをお勧めします。