リンパ浮腫
乳がんや子宮癌手術後の腕や脚のむくみ、お困りになっていませんか?
がんの治療では様々な治療法が行われますが、「リンパ浮腫」という腕や脚のむくみを引き起こすことが分かっています。体の中には、動脈と静脈のほかにリンパ管と呼ばれる管があります。リンパ管は、全身の皮膚のすぐ下に網目状に張り巡らされていて、このリンパ管の中にはリンパ液という液体が流れています。
リンパ浮腫とは、異常に貯留したリンパ液により浮腫をきたす疾患のことで、明らかな原因がなく発症する原発性リンパ浮腫と、がん切除後などに発症する二次性リンパ浮腫があります。日本においてはがん治療後の二次性リンパ浮腫が多くを占めています。
二次性リンパ浮腫は、婦人科がん(子宮がん、卵巣がん)や乳がんなどの治療のためにリンパ節郭清、センチネルリンパ節生検、放射線照射を受けた場合、治療後に下肢や上肢のむくみとして自覚されます。脚や腕の付け根にあるリンパ節が傷害されたために、リンパ液が体幹に戻れなくなって脚や腕に貯まってしまった状態です。リンパ浮腫ではリンパ流のうっ滞により局所免疫能が低下し感染・炎症を生じやすくなります。外傷などの明らかな原因がなくとも、体調がすぐれない時などに患肢が熱をもち赤くなる蜂窩織炎を生じやすくなり、それ以降さらに蜂窩織炎を発症しやすくなる、という悪循環になります。
当院では、これまで治療が難しかったリンパ浮腫、リンパ関連疾患を、超微小外科技術、また再生医療技術なども用いることで、治療を目指しております。特に外科的治療においてはこれまで500例以上の症例経験の豊富な医師が担当しております。すぐに受診ができますので、お気軽にお問い合わせください。
症状
- 浮腫:一般的には下肢や上肢などの末梢部位によく現れますが、顔や頸部、体幹部にも発生することがあります。
- 重さや不快感: 腫れた部位が重く感じたり、不快感を引き起こすことがあります。日常の動作や運動が制限されます。
- 皮膚の変化: 浮腫した部位の皮膚は硬くなり、凹凸や陥没した外観を呈することがあります。
- 感染のリスク: 浮腫した部位の組織は脆弱になり、蜂窩織炎などの感染症のリスクが高まります。
外科的治療
従来から行われている保存療法としては、患肢挙上、安静、生活指導、利尿剤などの薬物投与、空気圧マッサージや弾性ストッキングを用いた治療があります。ただ、リンパ浮腫の患者さんたちは弾性ストッキングなどの圧迫療法や安静以外に有効な方法がないという状況に長らく置かれてきました。
このリンパ浮腫に対して、静脈を利用して脚や腕からリンパ液を静脈に戻すリンパ管細静脈吻合術(LVA)という手術があります。脚や腕の皮膚を2~3cm切開して太さ0.5mm前後のリンパ管を探し、顕微鏡で見ながら近くの静脈につなぎます。
リンパ管静脈吻合術(LVA:Lymphaticovenular anastomosis)
この手術法は、足のむくんだ部分のリンパ管を静脈に吻合することで、うっ滞したリンパ液を中枢方向へ流そうという方法です。0.5 mm程度の細いリンパ管を手術用顕微鏡の下で静脈に吻合するので高度な技術を必要としますが、1か所が3cm程度の傷で済むため負担の少ない手術です。
よい手術を行うために、当院では術前にICG蛍光リンパ管造影によるリンパ管のマッピングを行い、できる限り良いリンパ管を見つけておきます。吻合に用いる手術器具や針糸なども専用の繊細なものを使用するため、スーパーマイクロサージャリーと呼ばれる手技が必須となります。

リンパ移植
健常な部分からリンパ組織を患肢に移植します。リンパ管が荒廃している場合に、適応になります。

脂肪吸引
リンパ管環流の阻害要因となっている脂肪を吸引し除去することで、浮腫の軽減と共に、リンパ液の排出をスムーズにします。
再生医療
当院では、再生医療の技術を用いたリンパ管・血管の再生によるリンパ浮腫治療にも力を入れております。脂肪の中に存在する幹細胞が関与するリンパ管新生・血管新生によりリンパ浮腫の改善を図ります。
検査
当院ではICG(インドシアニングリーン)とPDEカメラを用いた、ICG蛍光リンパ管造影法によるリンパ管機能の検査を行なっております。
軽症のリンパ浮腫のICG蛍光リンパ管造影所見

重症のリンパ浮腫のICG蛍光リンパ管造影所見
