粉瘤

  1. 粉瘤とは
  2. 粉瘤の原因
  3. 粉瘤の診断
    • 臨床症状
    • 画像検査
    • 病理検査
  4. 粉瘤の治療
    • 切開法
    • くり抜き法
    • 炎症性粉瘤に対する治療
  5. 注意点

1. 粉瘤とは

粉瘤(表皮嚢腫; アテローマ; アテローム)とは、最も頻度が高い皮下の良性腫瘍です。

本来皮膚から剥げ落ちるはずの角質や皮脂といった毛包漏斗部由来の上皮成分が、皮内や皮下に落ちて袋状構造を形成し、その中に粥状の垢や脂が溜まっていきます。貯留物は袋の外には排出されないため、時間経過とともに少しずつ大きくなっていきます。皮下なら身体中どこでも発生する可能性がありますが、頭頸部や体幹部に生じることが多いです。男女差はほぼありません。

嚢腫部分が感染などにより炎症が生じると、表面が赤くなり、痛みを伴うようになります。この段階で症状を自覚する例もあります。

2. 原因

はっきりとした発生原因はわかっていません。打撲や外傷によるきずあとや、ニキビ痕と関連するとも言われています。決して「不潔にしている」のが原因ではありません。また、予防法は確立されていません。

3. 診断

臨床症状で診断できることが多いですが、鑑別のために画像検査を行うこともあります。確定診断は病理検査です。

  • 臨床症状
    • 症状としては、皮下に1〜5cm程度の半球状腫瘤がふれることが一般的です。皮膚から腫瘤が透けて、青色や黒色に見えることがあります。上にある皮膚との可動性はありません。腫瘤の中央部分に黒点状の開口部があるのが典型的です。強く押したりすると、中央の開口部から膿汁と臭い粥状の構造物が排出されます。大きくなるスピードは様々で、自覚してから急速に増大して、10cm程度にまで至ることがあります。
    • 何らかのきっかけで腫瘤が二次感染を起こすと、表面が赤くなり(発赤)、痛みを伴う(疼痛)など、炎症性の所見がみとめられるようになります。腫瘤の内容物も、さらに粥状になり、表面から触れると、よりブヨブヨしてきます。腫脹が限界に達すると、嚢腫が破裂して非常に悪臭を放つ内容物が排出されます。
  • 画像検査
    • 画像検査としては、超音波検査(エコー)やMRI検査があります。エコーでは、炎症所見がない場合は嚢腫構造と側方の著明な低エコー像、底部後方の高エコー像を呈します。一方、炎症所見を伴う場合は、嚢腫壁は破壊され、外側陰影の消失と不整な壁構造を呈します。エコーは外来でも簡便にできますが、エコーでは他の腫瘍性病変との鑑別が難しい場合はMRIを行うこともあります。MRIで腫瘍は、T1強調画像で低信号・T2強調画像で高信号に描出されます。しかし、画像検査では鑑別が困難なこともあります。
  • 病理検査
    • 術後の病理検査で確定診断を行います。顕微鏡下で、皮下に嚢状の構造物があり、内部に角質物質を入れた像を呈します。術前の所見で疑わしくなくとも、病理組織が悪性の場合は、悪性腫瘍に準じて治療を検討されることがあります。

4. 治療

根治的な治療法は、貯留物を納めている嚢腫壁を完全に切除することです。

直径5mm程度で比較的小さい場合は、外来で腫瘤に穴をあけて中身を出し切るだけでも改善することがあります。それ以上の大きさで炎症がない場合は、切開法か、くり抜き法が適応になります。これらは、一般的には日帰りの局所麻酔手術となります。比較的大きい例、深部に入り込んでいる例や、主要な神経や血管が近くを走行している例では、入院下での全身麻酔での手術をお勧めする場合もあります。また、炎症が波及している場合は、程度により抗生剤内服で経過をみるか、切開排膿をします。

4-1. 切開法

手術では、腫瘍が摘出しやすい体位で横になっていただきます。切開法では、腫瘤の1〜2倍の長さで、嚢腫上の開口部を含めるように表層皮膚を紡錘形にデザインします。そのデザイン部位周囲に局所麻酔を局注していき、麻酔の効果が出てきたのを確認してから切開をしていきます。切除する表層皮膚を端緒に、腫瘤を、嚢腫壁を破らないように周囲の結合組織から剥がしていきます。全周性に剥離ができたら腫瘍を摘出します。病変の性状によっては、嚢腫壁が破れやすく、手術操作中に破膜する可能性があります。この場合は、残る嚢腫壁が視認しにくくなり、嚢腫壁の可及的な完全切除が困難になります。創部は洗浄・止血をした上で、皮下は吸収糸で、表層は非吸収糸で縫合していきます。部位によっては皮下を縫合しない場合があります。また、血腫や漿液腫が予想される症例では、ドレーンというシリコン性チューブを留置することもあります。手術翌日からは1日1回創部を泡せっけんで洗浄し、きれいに洗い流してから、軟膏を当ててガーゼで覆います。ドレーンが留置されていれば、染み出しが少なくなった術後数日で抜去します。抜糸は1-2週間で行います。抜糸以後はテーピングなどを行い、きれいな傷跡を目指します。嚢腫が切除した場合、再発の可能性はかなり少なくなります。

4-2. くり抜き法

くりぬき法では、腫瘤周囲に局所麻酔を行ったのち、表層の開口部に直径4mmほどの円筒状のメスを差し込んでいきます。周囲の皮膚と共に、袋状構造物を部分的にくり抜き、内容物をもみ出しながら嚢腫壁も可及的に除去します。基本的には創部の縫合は行わず、開放創とします。切開法よりも手術時間が短く、比較的簡便に行えますが、術後に創部が落ち着くまでの期間は、切開法より長くなります。また、切開法と比較すると嚢腫壁が残存し、再発する可能性が高くなります。加えて、手掌や足底の病変や、炎症を繰り返して周囲組織との癒着が強い時には適応にならない場合があります。

4-3. 炎症性粉瘤に対する治療

炎症が起こっている場合、軽症例では抗生剤の内服や、病変内へのステロイドの注射を行う場合があります。強い炎症反応が起こっている場合は、表面を切開し、化膿している貯留物を可及的に排出します。開放創に対して1日1回創部を泡せっけんで洗浄し、きれいに洗い流してから、軟膏を当ててガーゼで覆います。炎症が落ち着き、自然に傷口が閉鎖するのを待ちます。嚢腫壁がそのまま残っているので、粉瘤自体は数ヶ月で再び増大します。炎症が起こっていない状況で手術を再検討します。

5. 注意点

粉瘤自体は悪性腫瘍ではありませんので、浸潤転移などで寿命を短くするようなことはありません。しかし、炎症が波及すると症状が悪化し、膿皮症などに移行する可能性がありますので、早めの治療介入がすすめられます。切除して病理検体で確認しないと粉瘤以外の疾患かどうか、最終的にはわかりません。皮下のできものを自覚された場合、まずは医療機関を受診し、相談してみることが重要です。

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