尋常性乾癬(かんせん)

  1. 概要
  2. 病態
  3. 症状
  4. 治療

1. 概要

乾癬は、代表的な炎症性角化症の1つで、難治性の皮膚疾患です。有病率は欧米で2%、日本では0.2-0.3%程です。近年になり、乾癬の炎症反応の病態生理の理解が進み、治療方法が劇的に進化しています。感染では、皮膚構築細胞と免疫細胞の間で、免疫の制御が乱れた結果、炎症のループが加速し、皮膚症状として、境界明瞭な紅斑と鱗屑という特徴が生み出されます。また、症状が皮膚病変だけでなく、関節炎などの全身症状も有することが多くなっています。乾癬には、尋常性乾癬、乾癬性関節炎、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症などがありますが、ここでは多くを占める尋常性乾癬について述べていきます。

2. 病態

乾癬においては、外界からの刺激を契機として、角化細胞がIL-37などの炎症性分子を産生し、樹状細胞、T細胞の活性化が引き起こされ、IL-12、IL-23などの影響で、Th1細胞、Th17細胞への分化が起こります。それらは、IFN-γ、IFN-αを産生し炎症反応が誘導され、またIL-17、IL-22を産生し表皮細胞の過増殖がもたらされます。近年になり、このような乾癬の病態の理解が進み、それらの分子を治療ターゲットとした生物学的製剤が多数臨床応用されており、治療方法が劇的に進化しています。

3. 症状

境界が明瞭で、扁平で、わずかに隆起した紅斑局面で、表面には銀白色の厚い隣接を付着した皮疹が認められます。頭部、四肢伸側、腰臀部などに好発します。爪に出てくることもあります。似たような疾患として、梅毒、皮膚筋炎、皮膚T細胞リンパ腫、アトピー性皮膚炎、爪白癬、体部白癬などがあり、見分けがつきにくい場合は、皮膚生検を行うこともあります。皮膚生検では、不全角化を伴う角質の肥厚、角層下への好中球の浸潤、真皮乳頭の血管拡張と炎症細胞浸潤などが認められます。Psoriasis Area and Severity Index(PASI)やDermatology Life Quality Index(DLQI)などを使用し、客観的に症状を評価するのも重要です。

4. 治療

治療の基本は、ステロイド外用薬とビタミンD3外用薬による外用療法です。中等症以上になると、内服療法や光線療法を追加します。重症になると、生物学的製剤などの使用を検討します。

4-1. ステロイド外用薬

ステロイド外用薬は、Strongest / Very Strong / Strong / Medium / Weakの5段階の強さに分けられます。そのときの皮膚状況に合わせた適切な強さのステロイド外用薬を使用します。ステロイドは即効性があり、症状を抑えるために必要な薬です。長期間使用すると皮膚萎縮や酒さなどの合併症に注意が必要になります。

4-2. ビタミンD3外用薬

ビタミンD3外用薬は、緩やかに効果が出始め、即効性はありませんが、長期にわたって使用するのに向いた薬です。ご高齢の方、腎臓の弱っている方では高カルシウム血症、急性腎不全などの副作用を起こすことがあるため、注意が必要です。タカルシトール製剤(ボンアルファ)、カルシポトリオール製剤(ドボネックス)、マキサカルシトール製剤(オキサロール)などが使用可能です。

4-3. シクロスポリン(ネオーラル)

免疫抑制剤の1つです。乾癬は免疫の異常が原因ですので、過剰に働いている免疫を抑えることで症状が改善します。副作用として感染症に罹りやすくなること、腎臓や肝臓の働きが弱まる可能性があることが挙げられます。シクロスポリンを使用中は定期的な採血が必要です。

4-4. エトレチナート(チガソン)

ビタミンA誘導体です。症状のある皮膚を剥がれやすくし、新しく正常な皮膚ができるよう促します。免疫抑制剤では感染症にかかりやすくなるという副作用がありますが、エトレチナートは免疫を抑えないため、ご高齢の方でも比較的安全に使えます。

ただし、催奇形性の報告があるため、服用中は男女ともに避妊が必要で、内服中止後も、女性は2年間、男性は半年の避妊が必要です。

4-5. メトトレキサート

主に関節リウマチに使われる薬ですが、乾癬にも効果的なことが分かってきました。副作用として骨髄抑制、間質性肺炎、肝線維症などが挙げられます。定期的な画像検査と採血検査が必要です。

4-6. 光線療法

皮膚に生じている炎症を抑制し、免疫のバランスを整える作用があります。ナローバンドUVB(311nmの波長)などが用いられます。全身への影響が少ないので、比較的導入しやすい治療法と言えます。

4-7. 生物学的製剤

重症の方は、生物学的製剤と呼ばれる種類の注射薬を用いて治療します。アダリムマブ(ヒュミラ)、インフリキシマブ(レミケード)、セルトリズマブペゴル(シムジア)、ウステキヌマブ(ステラーラ)、セクキヌマブ(コセンティクス)、イキセキズマブ(トルツ)、ブロダルマブ(ルミセフ)、グセルクマブ(トレムフィア)、リサンキズマブ(スキリージ)、チルドラキズマブ(イルミア)といった薬があります。

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