脂漏性皮膚炎

  1. 脂漏性皮膚炎とは?
    • 乳児型脂漏性皮膚炎
    • 成人型脂漏性皮膚炎
  2. 脂漏性皮膚炎の原因
  3. 脂漏性皮膚炎の診断
  4. 脂漏性皮膚炎の治療
    • 乳児型脂漏性皮膚炎の治療
    • 成人型脂漏性皮膚炎の治療
  5. 脂漏性皮膚炎になったときの注意点

1. 脂漏性皮膚炎とは?

 脂漏性皮膚炎は頭や顔などを中心に、皮脂の分泌が多い場所にできる湿疹です。新生児期から1歳ごろまでにみられる乳児型脂漏性皮膚炎と、思春期以降の成人にみられる成人型脂漏性皮膚炎があります。

1-1. 乳児型脂漏性皮膚炎

乳児型脂漏性皮膚炎は、乳児湿疹(乳児期に見られる湿疹の総称)のうちの一種といえます。生後2週間ごろから脂腺が発達するために発症し、生後5~6週後くらいから多く見られます。生後3か月ごろには自然と皮脂分泌が減っていくため、多くは適切なスキンケアのみで軽快します。

症状としては皮膚の赤み(紅斑)と黄色いかさぶた(脂性の痂皮)、角質のはがれ(鱗屑)が生じてきます。頭皮や顔面(特に眉毛、額、鼻)など、皮脂分泌が活発な場所を中心に症状はあらわれます。

1-2. 成人型脂漏性皮膚炎

成人型脂漏性皮膚炎は思春期以降にみられ、特に男性に多い傾向があります。一度発症すると良くなったり悪くなったりを繰り返し、慢性的に症状が続くことが多いです。成人で症状が出やすいのは、頭皮や眉間・眉毛、鼻の周囲、耳の後ろ、胸部や背部、わきの下、鼠径部などになります。いずれも、皮脂が多く分泌されたり、皮膚同士がこすれやすい場所です。

乳児型と同様に、皮膚の赤み(紅斑)と黄色いかさぶた(脂性の痂皮)、角質のはがれ(鱗屑)が生じてきます。

2. 脂漏性皮膚炎の原因

脂漏性皮膚炎の発症には、皮膚の常在菌であるマラセチア菌が関わっているといわれています。真菌の仲間であるマラセチア菌は、生後1日の段階で90~100%の新生児の皮膚から検出されるほどで、ほぼ全ての人間の皮膚に存在しています。

マラセチア菌は皮脂を栄養として増殖するのですが、その過程で作られる遊離脂肪酸(パルミチン酸、オレイン酸など)が皮膚を刺激し、脂漏性皮膚炎の発症や悪化を引き起こすといわれています。また、異常増殖したマラセチア菌そのものが人体の免疫機能を反応させ、皮膚の炎症を引き起こす原因ともなっています。

マラセチア菌の異常増殖のメカニズムは完全には分かっていませんが、環境による皮脂の成分や分泌量の変化、ビタミンB群の不足、皮脂の洗浄不足、乾燥、ストレス、紫外線の影響などさまざまな要素が重なって引き起こされると考えられています。成人型脂漏性皮膚炎では、皮脂分泌を促進する男性ホルモンのアンドロゲンも影響しているといわれます。

3. 脂漏性皮膚炎の診断

脂漏性皮膚炎の診断は、患部の状態と症状があらわれる部位を観察することで行われます。必要に応じて、マラセチア菌を観察するための顕微鏡検査を行う場合もあります。発症部位が頭皮や顔面といった皮脂の多い場所、といった特徴から診断をつけていきます。

4. 脂漏性皮膚炎の治療

4-1. 乳児型脂漏性皮膚炎の治療

乳児型脂漏性皮膚炎の場合は、よく泡立てた石鹸で十分に頭部や顔面を洗います。頭部に厚く付着する黄色いかさぶたは、医療用オリーブ油や椿油、親水軟膏などを塗布して柔らかくしてから洗うと除去しやすくなります。症状はほとんどの場合一過性で、適切な洗髪や洗顔を行ううちに自然と治ることがほとんどです。

4-2. 成人型脂漏性皮膚炎の治療

 成人型脂漏性皮膚炎では、洗顔や洗髪だけでは症状が改善せず、慢性化する傾向にあります。薬物治療として、炎症を抑えるステロイド外用薬や、マラセチア菌の増殖を抑える抗真菌外用薬が用いられるほか、かゆみがある場合には抗ヒスタミン薬が処方されることがあります。

ステロイド外用薬の例としてはロコイド軟膏/クリーム(ヒドロコルチゾン酢酸エステル)、リドメックス軟膏/クリーム/ローション(プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル)、アンテベート軟膏/クリーム/ローション(ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル)などがあります。()で示したのは薬品の成分名で、ジェネリック医薬品ではこちらの名前になっていることが多いです。

頭皮の炎症に対しては、ステロイドを配合したシャンプー様外用液剤のコムクロシャンプー(クロベタゾールプロピオン酸エステル)が処方されるケースもあります。

抗真菌外用薬では、ニゾラールクリーム/ローション(ケトコナゾール)が使われます。また、抗真菌薬のミコナゾール硝酸塩が配合されたシャンプーやリンスが市販されていますので、頭皮の症状に対して日常での使用をアドバイスされる場合もあります。

5. 脂漏性皮膚炎になったときの注意点

乳児型脂漏性皮膚炎は、ほとんどの場合一過性で改善します。生後間もない乳児に発症する皮膚疾患のため、不安を感じる保護者の方もみえると思いますが、適切なスキンケアを続けていきましょう。

成人型脂漏性皮膚炎においては、生活習慣の改善も治療のために有用です。睡眠不足や過労、ストレスで症状が悪化することが知られていますので、規則正しい生活を心がけ、適度な休養や気分転換でストレスの軽減をはかりましょう。暴飲暴食を避け、ビタミン類を含むバランスの取れた食事をとってください。アルコールやタバコは症状を悪化させますので、できるだけ控えて下さい。

洗顔や入浴は、清潔を保つためにできるだけ毎日行ってください。頭皮に症状がある場合、整髪料は毛先に必要量のみ使用することを心がけると良いでしょう。パーマやヘアカラーは、頭皮の炎症が強いときには避けてください。

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