凍瘡・しもやけ

  1. 凍瘡(しもやけ)とは?
  2. 凍瘡(しもやけ)の原因
  3. 凍瘡(しもやけ)の診断
  4. 凍瘡とよく似た疾患
    • 手湿疹/あかぎれ
    • 接触性皮膚炎
    • 白癬
    • 全身性エリテマトーデス
    • サルコイドーシス
  5. 凍瘡(しもやけ)の治療
    • 軽症の場合
    • 重症の場合
  6. 凍瘡(しもやけ)の予防
  7. 凍瘡(しもやけ)になったときの注意点

1. 凍瘡(しもやけ)とは?

冬になると起こる皮膚疾患のひとつ、しもやけ。医学的には凍瘡(とうそう)と呼ばれています。

寒さによる刺激で血流が悪くなり、手先や足先、頬、耳などといった体の末端部が赤紫色になって腫れあがります。かゆみやジンジンした痛みを伴い、ひどい場合は水ぶくれを生じたり、水ぶくれが破れて潰瘍となることもあります。

入浴時や暖房にあたった時などには、体が温まることで患部のかゆみが強くなります。

凍瘡は小児に起こりやすい病気ですが、大人でも繰り返す場合があります。特に、水仕事の多い女性に起こりやすいといわれています。

凍瘡の症状には、患部の全体が赤紫色に腫れあがる樽󠄀柿型(たるがきがた)/T型と、小指の頭程度の赤い盛り上がりが複数発生する多型滲出性紅斑型(たけいしんしゅつせいこうはんがた)/M型、および両者の混在するMT型が見られます。T型は小児に多く、M型は大人に多い傾向があります。

2. 凍瘡(しもやけ)の原因

凍瘡は、気温が4~5℃、1日のうちの気温差が10℃以上となる環境で発症します。日中の寒暖差が大きいことで生じやすくなるため、季節の変わり目である秋の終わりや冬の終わりによくみられます。

寒さによる刺激を受けると、人間は手足の血管を収縮させ、体温の低下を防ぎます。暖かいときにはその逆で、手足の血管を拡張して熱を逃がします。しかし、寒暖差で血管の収縮と拡張をくり返すうちに、うまく血液が流れなくなることがあります。このために皮膚の炎症が起き、凍瘡が発症するのです。

手袋や靴下の中が蒸れたままになって汗をかいていたり、水仕事などで手足が湿っていると、水分の蒸発に伴い、皮膚表面の温度が下がって凍瘡を起こしやすくなります。

また、同じ環境にいても凍瘡になる人とそうでない人がいます。遺伝的に末梢の血液の流れを調節しにくい方は、凍瘡になりやすい体質であると考えられます。

3. 凍瘡(しもやけ)の診断

診察では問診を行い、寒い環境に置かれていなかったかを聞き取ります。一般的には特別な検査はせず、手足の末端や鼻の頭、頬、耳たぶといった凍瘡の出やすい部分を見ます。赤紫色や赤色の腫れがあったり、かゆみや痛みを伴うなどの症状が出ていれば凍瘡と診断できます。

ただし、よく似た症状があらわれる別の皮膚疾患があるため、必要な場合には検査を行って区別をつけることもあります。この場合は皮膚の組織を採取する生検や、血液検査、レントゲンやCT、MRIなどの画像検査を行うケースもあります。

4. 凍瘡とよく似た疾患

凍瘡と似た皮膚症状があらわれる疾患には、さまざまなものがあります。代表的なものを以下にまとめました。

  • 手湿疹/あかぎれ:いわゆる「手荒れ」が進行した状態で、手指の赤みやかゆみ、小さなブツブツがあらわれます。悪化すると皮膚が乾燥し、ひび割れを生じて「あかぎれ」となります。空気が乾燥する冬場にも多いですが、洗剤やアルコール消毒液などで皮膚の乾燥が進むことで、季節を問わず発症します。
  • 接触性皮膚炎:いわゆる「かぶれ」と呼ばれる症状です。皮膚に何らかの物質が触れることで、かゆみや赤み、ブツブツ、水ぶくれなどが生じます。
  • 白癬(はくせん):白癬菌というカビ(真菌)が、手足の指の皮膚に寄生して起こります。足で白癬菌が繁殖した場合は、一般的に「水虫」と呼ばれ、手に感染した場合は手白癬といいます。足の裏や手のひら、指と指の間が赤くなり、かゆみのある小さな水疱(水ぶくれ)ができたり皮がむけることもあります。凍瘡とは異なり、夏場に症状が悪化し冬場には軽くなる傾向にあります。
  • 全身性エリテマトーデス:免疫の働きに異常が起き、全身や皮膚の組織にさまざまな症状があらわれる自己免疫疾患です。20~40代の女性に多いといわれています。手のひら、足の裏、手足の指などに、凍瘡に似た赤い腫れ(凍瘡様紅斑)ができ、寒さをきっかけに症状が出る場合もあります。手足の症状以外に、全身性エリテマトーデスでは顔の特徴的な赤い腫れ(蝶形紅斑)が出やすいほか、脱毛、内臓の異常があらわれるケースもあります。凍瘡らしい皮膚症状の度合いがひどかったり、何度も繰り返すような場合は、この病気を疑って血液検査を行うこともあります。
  • サルコイドーシス:原因不明の全身炎症性疾患で、皮膚のほか複数の臓器に症状が出ます。皮膚にあらわれる症状も多彩ですが、びまん浸潤型サルコイドーシスと呼ばれるタイプでは、凍瘡によく似た病変があらわれます。症状が出る場所も凍瘡と同様、手足の指、鼻、頬、耳などの末梢部です。かゆみや痛みなどの自覚症状がない点と、寒い季節以外にも発症する点が凍瘡との違いです。

5. 凍瘡(しもやけ)の治療

 凍瘡が軽度の場合には、患部を保温して生活していれば自然と治っていきます。また、血行を良くするために患部をマッサージすることも有効です。

治療では症状に合わせて、塗り薬や飲み薬を組み合わせて使用します。

5-1. 軽症の場合

凍瘡に対して最もよく使われるのは、ビタミンEを主成分とした塗り薬や飲み薬です。ビタミンEには末梢の血管を拡張させ、しびれなどを和らげる作用があります。医療用医薬品としては、ユベラ軟膏(トコフェロール・ビタミンA)、ユベラ錠/Nカプセル/顆粒(トコフェロール酢酸エステル)が使われています。()で示したのは薬品の成分名で、ジェネリック医薬品ではこちらの名前になっていることが多いです。

また、血液が固まるのを防ぎ、血流の滞りを解消する作用のある、ヒルドイドソフト軟膏/クリーム/ローション(ヘパリン類似物質)も有効です。

他に、凍瘡によるかゆみや炎症に対しては、副腎皮質ステロイドの塗り薬や抗アレルギー薬の飲み薬を処方することもあります。

血行を良くして体を温め、手足の冷えを取る作用のある漢方薬の当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)、麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)などが使われる場合もあります。これらの漢方薬は冷え性がつらいときにも有効です。

5-2. 重症の場合

上記の薬に加えて、潰瘍ができているような重症例の凍瘡には処方を追加します。

傷口からの二次感染を防ぐ、ゲンタシン軟膏/クリーム(ゲンタマイシン硫酸塩)などの抗菌薬や、血液の流れを改善し表皮形成を促すプロスタンディン軟膏(アルプロスタジルアルファデクス)などが使用されます。

ここまでの薬剤で十分な効果が得られないときは、血管を広げて手足の冷えや痺れを改善するプロレナール錠/オパルモン錠(リマプロストアルファデクス)や、リプル注(アルプロスタジルアルファデクス)などを使用するケースもあります。

6. 凍瘡(しもやけ)の予防

凍瘡予防には、寒さを避けることが重要です。外出時には手袋や厚手の靴下、耳当てなどの防寒具を使用しましょう。使い捨てカイロの携帯も有効です。

運動して汗をかいたり、雪で濡れたりといった時には、濡れた手袋や靴下を早めに取り換え、靴も乾燥させましょう。水仕事のあとにはしっかりと手を拭いて水分を除きます。

糖尿病や閉塞性動脈硬化症など、血管が狭くなったり詰まったりして血行が悪くなる基礎疾患のある方は、凍瘡を発症しやすくなっています。重症化もしやすいので、冬場の生活には気をつけてください。

7. 凍瘡(しもやけ)になったときの注意点

予防時と同様に、寒さを避ける工夫をして治りを早くします。

喫煙は血管を収縮させるため、凍瘡の改善のためには控えることが望ましいです。お酒のアルコールも体温を発散させてしまうため、避けた方がよいでしょう。

急に手足を温めるとかゆみが生じるため、ゆっくりと保温するようにします。

凍瘡と似た症状の疾患には、場合によっては全身状態に関わるものもあります。凍瘡の症状がひどい、長引く、寒くもないのに凍瘡のような症状が出るといった場合は、医療機関を受診しご相談ください。

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