虫刺され

  1. 虫刺されとは?
  2. 虫刺されの原因
  3. 虫刺されの症状
  4. 虫刺されの診断
  5. 虫刺されの治療
    • 皮膚科受診の目安
    • 虫刺されの治療法
  6. 虫刺されの予防法と対策

1. 虫刺されとは

虫刺されとは、昆虫を含む節足動物によって起こる皮膚炎をひとまとめにして呼んだものです。医学的には虫刺症(ちゅうししょう)、もしくは虫刺性皮膚炎といいます。

腫れや痛み、かゆみが主な症状ですが、患部を掻きこわして細菌感染を起こす場合もあり、注意が必要です。虫刺されからアナフィラキシーショックを起こしたケースでは、命の危険が生じることもあります。

2. 虫刺されの原因

(1)吸血によるもの

 蚊、ブユ(ブヨ)、アブ、ノミ、シラミといった虫の吸血によって起こります。

(2)刺される・咬まれることによるもの

 ハチに刺されたり、ムカデ、クモなどに咬まれることで生じます。

(3)接触によるもの

 チャドクガ、イラガなど有毒毛を持つガの幼虫(毛虫)との接触で皮膚炎が生じます。

3. 虫刺されの症状

虫刺されによる皮膚炎は、虫の毒液や唾液の成分が皮膚に注入されることによる刺激反応、およびアレルギー反応によって引き起こされるものです。

  • 刺激反応

刺激反応の場合は、刺されたり咬まれたりすることによる物理的な刺激や、皮膚に注入された物質の化学的刺激によって、痛みや炎症、赤みが生じます。

  • アレルギー反応

アレルギー反応には、虫に刺された直後から症状が出て数時間後には治まる即時型反応と、刺されてから1~2日後に症状が出る遅延型反応があります。

即時型反応ではかゆみを伴う腫れ(膨疹)や赤み(紅斑)が出るほか、アナフィラキシー症状(※)を生じる場合があります。遅延型反応では、赤み(紅斑)や皮膚の小さな盛り上がり(丘疹)、水ぶくれ(水疱)などが起こります。

刺された回数や毒の種類、年齢や体質、アレルギー反応の有無などによって、症状には大きく個人差が出ます。

※アナフィラキシー症状:複数の臓器や全身にあらわれるアレルギー反応です。蕁麻疹やかゆみのほか、息切れや咳、腹痛や下痢、嘔吐が起こります。これらの症状に加え、血圧の低下や意識障害が起きている場合は、アナフィラキシーショックと呼ばれる危険な状態です。

4. 虫刺されの診断

問診で行動歴を聞き取り、患部の観察をします。これにより原因となる虫を推定し、似た別の疾患との区別をします。

以下に、身近な虫刺されの原因となる虫による症状をまとめました。

蚊に刺されると、直後から急激なかゆみとともに、盛り上がりのある発疹(膨疹)が出ます。数時間程度で跡を残さず自然と治るケースが多いのですが、症状が数日続いたり、水ぶくれができることもあります。

  • ブユ(ブヨ)

蚊に似ているブユですが、蚊とは違い、皮膚を噛んだ傷から出てきた血を吸う特徴があります。このため、赤い出血点や内出血を生じることも。刺されてから半日~1日後に、徐々に激しいかゆみと赤い腫れが出てきます。蚊に比べて症状が強く、患部にしこりが残ることもあります。

  • ダニ(イエダニ)

室内では、布団にもぐりこむイエダニによる吸血被害が多いです。腹部や腋の周囲、太ももの内側や二の腕など、衣服で隠れる部分が刺されやすいです。赤く、かゆみの強い小さなしこりができ、しつこいかゆみが数日から一週間ほど続くこともあります。

  • ノミ

ペットに寄生するネコノミやイヌノミが、ヒトを吸血する場合があります。刺されて1日~2日後に、強いかゆみと赤い発疹があらわれます。水ぶくれができる場合もあります。

  • 毛虫(チャドクガ、イラガ幼虫)

有毒毛を持つガの幼虫に触れると、赤く小さな発疹が多くでき、激しいかゆみを伴います。患部を掻いたり触ったりすると、有毒毛が他の部位に移動して症状が広がってしまいます。直接触れないようにして、粘着テープなどで有毒毛を取り除き、流水や石鹸で洗い流しましょう。

  • ムカデ

屋内や庭先に侵入したムカデを、気づかずに踏んだり触ったりして咬まれるケースがあります。咬まれた直後から毒液の成分により激痛が生じ、患部がしびれ、赤く腫れあがります。アナフィラキシー症状を生じる場合もあるため、異変を感じたらすぐに受診してください。

  • ハチ

 ハチに刺されると、ハチ毒の刺激で直後から激しい痛みが起こります。数分後には腫れが赤く大きくなり、強い痛みが続きます。複数回刺されることでハチアレルギーが生じ、アナフィラキシー症状を起こす危険性があります。ハチに刺されて受診した場合は、血液検査によって血清中のハチ毒抗体を調べ、次に刺された時にアナフィラキシーを生じる可能性がないか調べることもあります。スクラッチテストや皮内テストなどの皮膚検査でも、ハチ毒への反応性を調べることができます。

5. 虫刺されの治療

5-1. 皮膚科受診の目安

1~2時間程度で収まる皮膚のかゆみや腫れ、赤みについては、患部を冷やしたり、市販のかゆみ止めを使うことで自宅でも対応ができます。

かゆみや赤みが強かったり長引く場合は、ステロイド外用薬が必要です。

また、患部に水ぶくれができる、灼熱感や強い痛みがある、全身に蕁麻疹が出るといった場合は受診が必要です。掻きこわして膿んでしまった場合も、病院で診てもらうと安心です。

虫刺され後に呼吸ができないほどの息切れがある、下痢や嘔吐を繰り返す、血圧の低下や意識障害があるといった場合は、すぐに救急車を呼んでください。

5-2. 虫刺されの治療法

患部の洗浄や冷却、有毒毛や針の除去などの処置を行ってから、薬物治療を行います。

虫刺されによる遅延型のアレルギー反応の場合は、充分な強さがある処方せん医薬品のステロイド外用薬により、1週間程度で軽快します。フルメタ軟膏/クリーム(モメタゾンフランカルボン酸エステル)、アンテベート軟膏/クリーム(ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル)、マイザー軟膏/クリーム(ジフルプレドナート)などが代表的なステロイド外用薬です。()で示したのは薬品の成分名で、ジェネリック医薬品ではこちらの名前になっていることが多いです。

かゆみが強い場合は抗ヒスタミン薬などアレルギーの薬を内服します。抗ヒスタミン薬には、ポララミン錠(d-クロルフェニラミンマレイン酸塩)、ペリアクチン錠(シプロへプタジン塩酸塩水和物)、ゼスラン錠(メキタジン)などがあります。また、皮膚疾患に効果のある抗アレルギー薬であるデザレックス錠(デスロラタジン)、アレジオン錠(エピナスチン塩酸塩)、アレグラ錠(フェキソフェナジン塩酸塩)、アレロック錠(オロパタジン塩酸塩)などが処方されることもあります。

炎症が強い場合にはステロイド内服薬を併用します。リンデロン錠(ベタメタゾン)、プレドニン錠(プレドニゾロン)などが使われます。

患部を掻きこわして二次感染が起きている場合は、抗菌薬を使用します。内服薬ではダラシンカプセル(クリンダマイシン塩酸塩)、フロモックス錠(セフカペンピボキシル塩酸塩水和物)、クラリシッド錠(クラリスロマイシン)など多くの選択肢があり、外用薬ではゲンタシン軟膏/クリーム(ゲンタマイシン硫酸塩)、アクアチム軟膏/クリーム(ナジフロキサシン)などが使われます。

アナフィラキシーショックを起こした場合は、アドレナリンの筋肉注射と全身管理を行います。

外用薬・内服薬とも医師の指示にしたがって使用・服用し、自己判断で中止することのないようにしてください。薬による副作用が疑われる場合は、医師・薬剤師にご相談ください。

6. 虫刺されの予防法と対策

虫刺されの原因となる虫を避けることが、何よりの予防法です。ハチの巣や毛虫のいる木などには近づかないよう気を付けましょう。

ダニやノミなど室内害虫に対しては、寝具などを清潔に保つほか、燻煙型殺虫剤の使用や、発生源となるネズミの駆除が有効です。

屋外での虫刺されの予防には、皮膚の露出を避けた服装をすること、虫よけグッズを活用することが有効になります。

虫よけ剤には有効成分のディート、イカリジンが配合されたものを使用します。ディートの方が対策できる虫が多く、長時間効果が続きますが、年齢による使用制限があります。生後6か月未満の赤ちゃんには使用できず、生後6か月~2歳未満では1日1回、2歳~12歳では1日1~3回の使用となります。顔への使用は避けてください。12歳以上では、使用制限はありません。

イカリジンは有効とされる虫が限られていますが、年齢による使用や回数の制限がないため、お子さんにも気兼ねなく使うことができます。

ハチやムカデによるアナフィラキシー症状を起こす可能性が高い方には、エピペンというアドレナリン自己注射キットの携行が勧められます。アナフィラキシー発症時、医療機関に搬送されるまでの症状悪化の防止に役立ちます。

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