多汗症

  1. 概要
  2. 診断基準

1. 概要

多汗症は、手のひらや脇、足の裏などの限局した部位に大量の発汗が見られるものです。温熱や精神的な負荷、原因不明なものも含めたものを、原発性局所性多汗症と定義しています。感染症や糖尿病、甲状腺機能低下症、褐色細胞腫などの内分泌代謝異常や神経疾患、外傷や悪性リンパ腫、薬剤性などが原因による全身性の多汗症を続発性全身性多汗症と言います。

2. 診断基準

局所的に過剰な発汗が、明らかな原因がないまま半年以上、腋窩、頭、顔面に症状があり、

  • 対称性の発汗
  • 最初に症状が出るのが25歳以下
  • 睡眠中は発汗が止まる
  • 1週間に1回以上多汗のエピソードがある
  • 家族に多汗症の人がいる
  • それらによって日常生活に支障をきたしている

のうち2つ以上に当てはまれば多汗症と診断されます。

日常生活への支障は、手のひらの汗が多すぎて人と手を繋げない、汗ジミが酷く好きな服が着られない、臭いや汗が気になって人前に出られないなどを指します。

また、発汗の重症度を判別するにはHDSSという基準が用いられていますが

  1. 発汗は全く気にならず、日常生活に支障はない
  2. 発汗は我慢できるが、日常生活に時々支障がある
  3. 発汗はほとんど我慢できず、日常生活に頻繁に支障がある
  4. 発汗は我慢できず、日常生活に支障がある

このうち3と4に該当する場合、重症と診断されます。

該当した場合は診断を確定するために発汗検査を行うことがあります。発汗検査はヨード紙を使ったヨードでんぷん法が一般的です。これは発汗部位に触れると色が変わるヨード紙の性質を利用したもので、重症度判定にも使われます。

3. 症状

症状のピークは思春期で、中高年層では自然に治癒すると言われていますが個人差があります。臭いはないものの汗の量が多いことで、汗ジミで周囲の目が気になることやそれに伴い学業や仕事に集中できない、何度も着替えが必要、汗が目立つ色の服が着れない、汗で黄ばんでしまうのが早くすぐに買い替えが必要などの影響が出ていることが多いです。緊張すると汗が出始め、それを意識するともっと汗をかくなど精神的要因で汗が増える場合は対人関係に影響を及ぼすこともあります。

4. 治療

4-1. 外用療法

20%塩化アルミニウム外用液が最も良く用いられます。就寝前に汗をぬぐってから塗布し翌朝洗い流すことを繰り返し発汗の減少を狙います。

塩化アルミニウム以外では、抗コリン外用剤である5%ソフピロニウム臭化物ゲル製剤(エクロックゲル)が有効です。これは2020年11月26日に承認販売されました。しかし、保険適用は原発性腋窩多汗症のみとなります。さらに、ラピフォートワイプ2.5%という、原発性腋窩多汗症に対する1回使い切りのワイプ製剤も出てきました。こちらは2022年1月に承認された製品です。

4-2. 水道水イオントフォレーシス 

手掌や足底の多汗症で特に有効な方法です。通電することで生じる水素イオンが汗の吹き出し口を閉塞させることで発汗を抑制します。水道水中で両手両足間を通電させることで発汗を抑制するもので、10~15mAの電流を20分間通電する治療を週2、3回繰り返していきます。軽快した後は1,2週間おきの通電でも効果が持続すると言われています。

4-3. A型ボツリヌストキシン注射

末梢のコリン性シナプスに作用してアセチルコリンの遊離を抑制し、汗腺における神経伝達を阻害することで発汗を抑制します。効果は4~6か月なので、夏の発汗を抑える場合は夏場に年1回、通年発汗を押さえたい場合は年2回くらいの注射が必要です。痛み止めの塗り薬を行い、徐痛してから、皮膚の浅い箇所に注射をしていきます。

4-4. 交感神経遮断術

脇の汗を支配する交感神経を遮断し、発汗を抑える方法です。

4-5. 手術

腋臭症の治療目的も兼ねて、手術を行うこともあります。腋窩の皮膚を切開し、汗腺を除去する手術を行います。傷跡は、脇のしわに一致するので、あまり目立つことはないのですが、3-5cmほどの傷跡は残ります。皮膚壊死のリスクや血腫の形成、神経障害などが注意すべきリスクになります。

4-6. ミラドライ

詳しくはこちらをご覧ください。

4-7. 内服療法

多汗症の患者は、発汗に対する恐怖心で情緒不安定になることがあるため自律神経調整作用の強いトフィソパム、抗コリン薬のプロパンテリン臭化物なども効果があるとされています。

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