いぼ(尋常性疣贅)

  1. いぼ(尋常性疣贅)とは?
  2. 症状
  3. 原因
  4. 診断
  5. 治療
    • 5-1. 液体窒素を用いた冷凍凝固療法
    • 5-2. その他の治療法

1. いぼ(尋常性疣贅)とは?

「いぼ」は、皮膚から盛り上がっている小さなできもので、ウイルスに感染したウイルス性疣贅と、軟性線維腫、脂漏性角化症(老人性疣贅)に大きく分けられます。ウイルス性疣贅はさらに疣贅(典型,非典型,特殊型)、伝染性軟属腫に分類されます。

ここで説明する尋常性疣贅は、ヒト乳頭腫ウイルス(human papillomavirus:HPV)感染によって皮膚および粘膜に生じる良性腫瘍です。通常、ウイルスが入ってきたときには体から排除しようとする免疫反応が起こりますが、ウイルス性イボとなってしまった場合は感染したウイルスが体の免疫を回避して住み着いてしまっています。

HPV感染が原因ですが、コンジローマや子宮頸がんを引き起こすものとは異なる型になります。

2. 症状

足裏、足指、手のひら、手指などに、盛り上がりのある「疣贅」ができます。多くの場合、1箇所だけでなく数カ所に同時発生します。疣贅が時に角化し、多発している場合にはくっついて融合することもあります。最初は足にできて、触ってしまうことにより手指や手のひらに症状が拡がってしまうこともあります。

通常は、かゆみや痛みなどの症状はありませんが、足の指や足の裏にできて盛り上がりが強い場合には、たこやうおのめと同じように押すと痛みがある場合があります。

3. 原因

ヒトパピローマウイルスが皮膚表面の小さな傷や粘膜から感染することにより起こります。感染してから症状がでるまでの期間は3~6か月で、最初は小さく平らで少し盛り上がっている程度ですが、時間とともに感染した皮膚の細胞が増殖し皮膚が厚く硬くなり、盛り上がります。年齢に関わらず手や足の指、手のひらや足の裏にできることが多いです。サイズは直径数mmのものが多いです。

HPVも色々な型があり、尋常性疣贅はHPV2a/27/57 型の感染です。HPVはヒトからヒトへうつることが主な感染経路で、銭湯やジム、プールといった公共施設で間接的にうつることもあります。また、水を触っている機会が多い職業の方は、皮膚表面が柔らかくなっており、細かい傷もおおいことから手からHPVが感染しやすく、手の疣贅が多いといわれています。

4. 診断

典型的な疣贅は視診(見た目)で確認することができます。さらに詳しくみるためには、ダーモスコピー検査をおこなうことがあります。ダーモスコピーとはダーモスコープという特殊なルーペのことで病変の構造を詳しく観察することができます。見た目に加えて、病変の血管の状態なども観察することができ、疣贅と診断するためにとても有用です。視診でわからない場合には病変の一部をきりとって顕微鏡でみる病理組織学的検査をおこなうこともあります。病理組織をみることでほかの病気であった場合の診断もつけることができます。

また、ウイルス性疣贅は感染するHPV遺伝子型により臨床像が決定されます。宿主の免疫状態により尋常性疣贅(典型例、非典型例)、特殊型、伝染性軟属腫に分類されます。

5. 治療

疣贅の治療では、HPV特異的な抗ウイルス薬が現在のところ存在しておりません。作用機序を異にする治療方法が、多岐に渡ります。治療はイボの種類、大きさ、数、通院できる頻度、年齢などを考慮に入れ、どの治療が適しているか決定していきます。ここでは、イボに対する代表的な治療法について解説します。

5-1. 液体窒素を用いた冷凍凝固療法

冷凍凝固療法はマイナス196℃の液体窒素をイボに当てて、「凍結」→「壊死」→「融解」→「新しい肌の形成」を繰り返す方法です。尋常性疣贅や脂漏性角化症などのイボに対する治療法として最も一般的です。治療後は数日でその部分が水疱化してから徐々にかさぶたになり、最終的に脱落して傷になります。傷が治癒すると正常な皮膚が出てきますが、イボが残っている場合は1~2週間に1回のペースで同様の治療を続けます。

冷凍凝固療法のメリットは、保険が適用される点と繰り返して治療ができる点です。

液体窒素を患部に当てる際には、綿棒を使う方法、スプレーで当てる方法、鑷子(せっし)(※ピンセットのことです)でつまむ方法などがあります。

  • 綿棒

綿棒にマイナス196℃の液体窒素を染み込ませ、5~30秒ほどイボに当て続けて凍結させます。綿棒を使うメリットは、ピンポイントに小さなイボを狙って治療できることです。イボが大きい場合は綿棒の先端にさらに綿を巻きつけて補強したものを使うこともできます。

  • 液体窒素スプレー

液体窒素をスプレーで当てる方法もあります。スプレーだとピンポイントで当てる範囲や強さを調整しづらいというデメリットがありますが、痛みが少なくお子さまでも続けやすいというメリットがあります。

  • 鑷子(せっし)ピンセット

軟性線維腫によく見られるような有茎性(記号のΩのような形)のイボの場合には、鑷子を使う方法も有効です。この方法では、液体窒素につけて冷やした鑷子でイボの茎の部分をつまみ、集中的に冷却します。こうすることで、病変を根元から効率よく取り除くことができます。

5-2. その他の治療法

その他にも様々な治療法があり、保険適応のものもあればそうでない治療法もあります。また、一つの治療法ではなく、複数の方法を組み合わせて治療することもあります。

  • モノクロロ酢酸を用いた治療

強い酸でイボ組織を腐食させ、壊死させます。痛みが少ないのがメリットです。

  • サリチル酸軟こう塗布又はサリチル酸絆創膏による治療

サリチル酸軟膏や絆創膏でイボをふやけさせ、いずれ取れるのを待つ治療です。

  • ヨクイニン内服による治療

内服の漢方薬ハトムギの成分であるヨクイニンを服用することで免疫力を高めてイボの改善をはかります。即効性はありませんが、頻繁に通院できない患者さまには向いています。

一般皮膚科

前の記事

汗疹