疥癬

  1. 疥癬とは?
  2. 疥癬の原因
  3. 疥癬の症状
    • 通常型疥癬の症状
    • 角化型疥癬の症状
  4. 疥癬の診断と検査
    • 顕微鏡検査
    • ダーモスコピー
  5. 疥癬の治療
    • 外用薬の治療
    • 内服薬の治療
  6. 疥癬にかかった時の注意点
    • 通常型疥癬での注意点
    • 角化型疥癬での注意点

1. 疥癬とは?

疥癬(かいせん)は、ヒゼンダニという小さなダニがヒトの皮膚に寄生しておこる病気です。人から人へとうつる感染症です。

普通にみられる疥癬である通常疥癬では、感染してから一か月ほどの潜伏期間を経て、全身に赤いブツブツ(丘疹、結節)ができ、激しいかゆみを伴います。

免疫の低下や体の麻痺などが起こっている方の場合は、重症化した角化型疥癬(かくかがたかいせん)に移行することがあります。角質が増殖し、全身に厚い「あか」が増えたようになります。かゆみを感じるかどうかは、人によって異なります。角化型疥癬では100~200万匹ものヒゼンダニが寄生し、他人への感染力も高まります。

2. 疥癬の原因

疥癬では、皮膚に寄生したヒゼンダニの体やフン、脱皮殻に対してアレルギー反応が起こるために、皮膚症状やかゆみが起こります。直接的に肌から肌へ、もしくは衣類やシーツなどを介して、ヒゼンダニが人から人へうつることで感染します。家庭内や病院、施設などで集団感染を起こす場合があります。

通常疥癬では、親密なスキンシップや寝具の共用などで感染がみられます。角化型疥癬では感染力が高いため、直接の接触以外にも、患部からはがれた角質が飛び散り付着することで間接的に感染します。短時間の見舞いや、洗濯などで感染者の衣類や寝具を扱っただけでも感染する場合があり、注意が必要です。

3. 疥癬の症状

3-1. 通常型疥癬の症状

通常型疥癬では、激しい痒みを伴う赤いブツブツ(紅斑性丘疹)が生じます。かゆみは特に夜間に強くなり、眠れなくなることもあります。この丘疹は腹部や胸部、わきの下、太ももの内側などにみられます。

また、皮膚表面に小豆大で赤褐色の結節が生じることもあります。この結節(疥癬結節)は、主に男性の陰部に生じますが、わきの下や臀部、肘などにできることもあります。生じる頻度は7~30%程度と低いのですが、大変強い痒みを伴います。

疥癬において特徴的な皮疹に、疥癬トンネルがあります。これは皮膚に見られる長さ5mm程度の皮疹で、線状に蛇行し、白っぽく見えます。ヒゼンダニのメスの成虫が、産卵のために角質層を掘り進むことで作られます。通常痒みを伴いますが、高齢者では痒みを感じない例もあります。

3-2. 角化型疥癬の症状

免疫力の低下や全身の衰弱、他の疾患が重い場合などには、角化型疥癬を発症するリスクが高くなります。

角化型疥癬では、手足や肘、膝、臀部などに、ざらざらとして厚い角質が付着します。この角質は灰色から黄白色で、牡蠣の殻のように積み重なっており、細かな表皮のめくれ(鱗屑)を伴います。角質となった部分からは、きわめて多数のヒゼンダニが見つかります。角化型疥癬を発症した際には、全身の皮膚が赤くなり紅皮症状態となる場合もあります。

4. 疥癬の診断と検査

疥癬は、ヒゼンダニそのもの、もしくはヒゼンダニの卵の発見によって診断されます。顕微鏡もしくは、ダーモスコープという拡大鏡を使って検査をします。

通常型疥癬では、ヒゼンダニの寄生数が少ないために、一度の検査では確定診断がつかない場合もあります。症状から疥癬の可能性が高かったり、周囲に疥癬の患者がいて感染が疑われる場合には、ヒゼンダニの発見まで繰り返して検査をすることがあります。

4-1. 顕微鏡検査

通常型疥癬が疑われる場合は、まず疥癬トンネルを見つけ、その先端からヒゼンダニを探します。症状が出ている部位から、ピンセットなどを使って検体を取り、顕微鏡で観察します。

4-2. ダーモスコピー

ダーモスコープという、10倍程度の拡大鏡を使って皮膚の表面を観察します。

5. 疥癬の治療

疥癬は、寄生しているヒゼンダニを駆除することで治療できます。外用薬と内服薬があり、症状に応じて使用します。

通常型疥癬では、外用薬の治療と内服薬の治療のいずれかを選択します。角化型疥癬の場合は、過剰な角質を入浴時のブラシがけなどで除去したうえで、内服薬と外用薬の併用が検討されます。角質の軟化や除去を助けるため、サリチル酸ワセリン軟膏、亜鉛華軟膏などが併用されることもあります。

薬はヒゼンダニの卵には効果が薄いため、一度目の投与で成虫を駆除したあと、残された卵が孵化するタイミングで再投与を行います。ヒゼンダニの卵は3~5日程度で孵化するため、完全に孵化が終わった7日後の再投与が推奨されています。

薬の使用終了後、1週間間隔で2回連続ヒゼンダニを検出できず、疥癬トンネルなどの症状も見られなくなったタイミングで治癒と判定されます。ただし、疥癬の治癒後にも痒みや発疹などの症状が残るケースもあります。この場合は保湿剤、抗ヒスタミン薬、ステロイド外用薬などで治療を行います。

5-1. 外用薬の治療

外用薬ではスミスリンローションが第一選択薬ですが、他の外用剤を使用する場合もあります。疥癬の痒みに対しては、抗ヒスタミン薬の併用で対処します。

スミスリンローション(フェノトリン):通常、7日間隔で1回1本(30g)を首から下の全身に塗り、塗ってから12時間以上経過したあとにシャワーなどで洗い流します。少なくとも2回以上の塗布を行います。

5-2. 内用薬の治療

内服治療にはストロメクトール錠(イベルメクチン)を使用します。体重1㎏あたり200㎍を、空腹時に1回投与します。内服7日後の再診で、疥癬の皮膚症状やヒゼンダニが発見された場合は、2回目の投与を行います。通常は2回の投与により、1ヶ月ほどで疥癬は治癒します。内服後、一時的に痒みが悪化する反応が出ることがあります。この場合は抗ヒスタミン薬の併用で対応します。

6. 疥癬にかかった時の注意点

家族や同室者、介護者との間でうつし合い(ピンポン感染)が起こらないよう、感染予防に注意を払う必要があります。疥癬が集団発生した場合は、一斉に治療を行います。

6-1. 通常型疥癬での注意点

入浴時のタオルや寝具などは共用を避けます。肌と肌での接触や、同室で布団を並べて家族と眠ることはやめ、衣服は毎日交換します。シーツや衣類の交換や洗濯、部屋の掃除は通常の方法で問題ありません。患者さんとの接触の前後には、周囲の方は手洗いを行ってください。

6-2. 角化型疥癬での注意点

角化型疥癬は感染力が高いため、対応の際は注意が必要です。感染時には個室を使用します。個室への隔離の期間は、治療開始後1~2週間が目安です。

シーツや衣類は毎日交換し、はがれた角質が飛び散らないようビニール袋に入れて運びます。洗濯時には50℃のお湯に10分間以上浸したあとに洗濯し、充分に乾かします。ただし、洗濯乾燥機を使用する場合は、高温でヒゼンダニの駆除ができるため普通に洗濯してもかまいません。

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