ケロイド・肥厚性瘢痕

  1. 肥厚性瘢痕・ケロイドとは?
    • 肥厚性瘢痕
    • ケロイド
  2. 原因
  3. 診断
  4. 治療
    • 圧迫療法
    • 外用療法
    • 局所注射療法
    • 内服療法
    • レーザー治療
    • 外科的治療
    • 術後放射線療法

1. 肥厚性瘢痕・ケロイドとは?

肥厚性瘢痕・ケロイドは、きずあとにできる赤色調の隆起性病変です。何らかの要因により創傷治癒の過程が遷延し、炎症が続くために、炎症細胞の蓄積、血管の増生、膠原線維が過剰に増生して生じます。一般に、かゆみや圧痛を伴います。関節などで生じると拘縮による機能障害が起こることがあります。主に傷を超えて拡大するかどうかで肥厚性瘢痕とケロイドに大別されます。

1-1. 肥厚性瘢痕

外傷や縫合後の傷跡が、それぞれの体質や環境などの要因で肥厚性瘢痕になります。全身どこでもできる可能性があります。関節部分などに生じた長軸方向の瘢痕や熱傷などの創傷治癒が遷延することは、原因の一つとなります。傷を超えて病変が拡大していくことはありません。

1-2. ケロイド

小さなニキビや虫刺症など、軽微な傷でもケロイドとなることがあります。外傷や縫合後の傷跡で、緊張がかかる部位に起きやすい傾向があります。肥厚性瘢痕との最大の違いは、ケロイドは傷を超えて健常皮膚にまで病変が拡大していくことです。前胸部、下腹部、恥骨部、膝部などにみとめられることが多いです。

2. 原因

はっきりとした発生機序は判明していません。近年の研究で、皮膚にかかる力学的緊張や炎症の強弱との関連も示唆されています。外傷、熱傷、ニキビ、毛包炎、外科的手術痕、ピアス痕などに発生しやすいです。生体内のホルモンバランス、高血圧、全身の炎症、過度な飲酒や運動、人種などの要因や体質が影響すると言われています。

3. 診断

肥厚性瘢痕とケロイドは臨床所見で診断していきます。今のところ、有用な血液検査や画像検査はありません。他の皮膚疾患との鑑別のために病理検査を行うこともあります。

4. 治療

肥厚性瘢痕とケロイドは共通して、まずは保存療法から試していきます。治療抵抗性の場合、外科的な切除術や術後放射線療法を行います。

4-1. 圧迫療法

テープ、スポンジ、シリコンゲルシート、弾性包帯やコルセットなどを用いて病変を圧迫することで、固定します。圧迫によって病変内の血流を低下させ、線維芽細胞の増殖が抑制されると考えられています。

4-2. 外用療法

ステロイドや保湿剤を軟膏として病変に塗ります。ステロイドには抗炎症作用がありますので、皮膚の線維芽細胞の増殖を抑えることで、発赤や掻痒感が改善します。

また、ステロイドテープも広く使われており、ドレニゾンテープ®、エクラープラスター®の主に2種類があります。病変を超えて貼ると正常部分にも発赤などの影響が出る可能性があるため、なるべく病変内で貼るようにします。病変の性状に応じて、全体に貼ったり、両側の隆起部のみに貼付したり、貼る日数を調節したりします。ドレニゾンテープ®は透明なテープで薄いタイプのステロイドテープです。エクラープラスター®は比較的新しく出たステロイドテープです。テープは比較的厚いですが、ドレニゾンテープ®より効果が強いのが特徴です。

4-3. 局所注射療法

ケナコルト®などのステロイドを病変内に直接注射します。薬剤が直接病変内に届くため、外用や内服療法と比較すると、高い効果が期待できます。デメリットとしては、注射時の痛み、注射部位の皮膚の菲薄化、脂肪が凹む合併症が起こりうること、などが挙げられます。

4-4. 内服療法

肥厚性瘢痕・ケロイドに対する内服薬で、保険適応があるのはトラニストというものです。トラニストは抗アレルギー薬であり、線維芽細胞の反応性増殖を抑えた上で、病変の発赤や掻痒感を軽減させます。

4-5. レーザー治療

病変内の血管の数を減らすために血管に反応するレーザーを用いる治療法です。現行の健康保険では行うことができず、自費治療となります。

4-6. 外科的治療

瘢痕拘縮による機能面での問題や、保存的治療で難治の場合には手術が検討されます。手術においては、切除後の創部を工夫して縫合したり、術後放射線療法などを併用しています。手術の工夫としては、拘縮の解除、皮弁作成などによる創の方向転換、減張縫合などにより、創部にかかる張力を可及的に減らしていきます。

4-7. 術後放射線療法

術後の創部が再び肥厚性瘢痕・ケロイドになるのを予防するために、電子線を複数回に分けて照射していきます。術後創部の線維芽細胞の増殖を抑える効果があり、ケロイドの出来はじめに効果的です。巨大なケロイドや高齢の方では、放射線だけ単独で治療する場合もあります。デメリットとしては、周囲の正常な組織にも皮膚障害や色素沈着などの放射線障害が出てしまう可能性があること、また照射部位に「がん」が将来できる可能性が上昇することがあります。

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