白斑

  1. 白斑とは?
    • 先天性白斑・白皮症
    • 後天性白斑・白皮症
  2. 尋常性白斑とは?
  3. 尋常性白斑の原因
  4. 尋常性白斑の診断
  5. 尋常性白斑の治療
    • 外用療法
    • 紫外線治療
    • ステロイド全身療法
    • 外科治療
    • カモフラージュ療法
    • その他治療法
  6. 注意点

1. 白斑とは?

白斑とは、メラニン色素の欠如によって皮膚の一部、もしくは全体が白くなる病気です。生まれつきのものである先天性白斑・白皮症と、生まれたあとに生じる後天性白斑・白皮症に分けられます。

  • 先天性白斑・白皮症

先天性白斑・白皮症とは、先天的な遺伝子の異常によって、メラニン色素が合成されなくなっている病気です。この中で最も頻度が高いのが眼皮膚白皮症で、正確なデータはないものの、日本人では数万人に一人の割合で発症すると言われています。他の疾患はさらに頻度が低くなります。

現在は変異遺伝子そのものを治すことはできないため、対症療法と生活指導が治療の中心となります。合併症を伴う場合は、早期診断と経過観察、必要に応じた合併症の治療を行います。

  • 後天性白斑・白皮症

後天性白斑・白皮症は、何らかの後天的な原因で、メラニン色素が合成されなくなった病気の総称です。薬剤や化学物質によるもの、梅毒の感染に起因するもの、自己免疫疾患によるものなど原因はさまざまです。

この中で、最も頻度が高いのが尋常性白斑です。尋常性白斑は、白斑がみられる全ての疾患の中で60%を占め、全人口の0.5~1%が罹患していると考えられます。

2. 尋常性白斑とは?

尋常性白斑は、皮膚の基底層にあるメラノサイト(色素細胞)が、何らかの原因で減少・消失していく後天性の病気です。

初期の症状としては、まず発疹ができ、ついで不完全な脱色素斑となって、だんだんとその箇所の色が抜けていきます。正常な皮膚との境界線がはっきりしているのが特徴です。

現在のガイドラインでは、皮膚分節(※1)ごとに沿って症状がみられる分節型、分節に沿わない形で症状が出る非分節型、および分類不能群の3型に大きく分けられています。

(※1)皮膚分節:脊髄から出ている31対の脊髄神経は、それぞれ決まった領域で皮膚の感覚を支配しています。一つの脊髄神経根から伸びた感覚神経が、支配している領域を皮膚分節(デルマトーム)といいます。

3. 尋常性白斑の原因

尋常性白斑の原因については、いまだ研究途中の段階です。

非分節型では遺伝的な影響や環境因子、自己の免疫細胞がメラノサイトを攻撃してしまう、患部の酸化ストレス物質の増加が関与しているとされています。

分節型はまだ不明な点が多いのですが、体細胞変異によるという説があります。また、患部に発汗異常があること、ストレスで悪化傾向がみられることから、自律神経の異常が関与している可能性が指摘されています。

4. 尋常性白斑の診断

問診や皮膚の観察を行い、尋常性白斑診療ガイドラインに従って、他の脱色素性疾患との鑑別をします。

合併症が出ているか見極める必要があるため、必要に応じて自己免疫性甲状腺炎、I型糖尿病、重症貧血、副腎機能不全、膠原病、リウマチなどの検索を行うことがあります。

顔を中心に急速に進行する白斑の場合は、Vogt‐小柳‐原田氏病(※2)との鑑別のために、眼底および聴力検査を行う場合があります。

(※2)Vogt‐小柳‐原田氏病:自分の体のメラノサイトを攻撃してしまう自己免疫疾患で、メラニン色素の多い目のぶどう膜に強い炎症が起きます。髄膜炎や内耳の炎症、皮膚の白斑や白髪化、脱毛があらわれることもあります。

5. 尋常性白斑の治療

分節型と非分節型で、推奨される治療法は異なっています。また、合併症がある場合はそちらの治療も行います。

5-1. 外用療法

分節型の尋常性白斑、および全身の2~3%以下の非分節型尋常性白斑では、有効性が認められているステロイド外用剤、免疫抑制剤の外用剤が第一選択として利用されます。活性型ビタミンD3の外用剤も、多く使用されています。

年齢によって使用されるステロイドの強さが異なる場合もありますが、ステロイド外用剤としては、トプシム軟膏/クリーム(フルオシノニド)、アンテベート軟膏/クリーム(ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル)、ロコイド軟膏/クリーム(ヒドロコルチゾン酪酸エステル)などが使われます。()で示したのは薬品の成分名で、ジェネリック医薬品ではこちらの名前になっていることが多いです。

免疫抑制剤の外用剤としては、プロトピック軟膏(タクロリムス水和物)などが処方されます。

活性型ビタミンD3の外用剤では、オキサロール軟膏/ローション(マキサカルシトール)、ボンアルファ軟膏/クリーム/ローション(タカルシトール水和物)などが使われます。

日本では、15歳以下の顔面では、活性型ビタミンD3の外用を用いることが多いです。効果がない場合や16歳以上では、ステロイド外用を検討します。

5-2. 紫外線治療

全身の3%以上の非分節型尋常性白斑では、全身照射型のナローバンドUVB治療という紫外線治療が第一選択になります。ナローバンド UVB とは、311±2nmの波長を持つ紫外線の光源です。照射量にもよりますが、3か月以上9か月未満が治療期間の目安とされています。

また、限局した病変においては、ターゲット治療としてエキシマレーザー・ライト療法が効果的です。エキシマは308nmにピーク波長を有し、色素再性能に優れているとされます。エキシマは週1-2回の頻度で、20-30回照射し、色素再生の有無を評価します。最大照射量はおおよそ500-600mJ/cm2が目処になります。オキサロール軟膏を患部に事前塗布し、照射しない部位にはUV blockを塗布して行うこともあります。

淡い紅斑が出る照射量が色素再生に有効とされていますが、スキンタイプを見分け、火傷に注意も必要です。

5-3. ステロイド全身療法

発症5年以内で、難治性かつ進行性の症例に対して、内服ステロイドによる全身療法が行われることがあります。プレドニン錠(プレドニゾロン)などが用いられます。

5-4. 外科治療

1年以内に症状が進行していない症例に対して、見た目の問題がある部位にのみ限定して行われるべきとされます。分層植皮術、表皮移植術、ミニグラフトといった、自分の皮膚を取って患部に移植する方法もあります。エキシマライトを組み合わせる方法もあります。

5-5. カモフラージュ療法

顔など人目に触れる位置に尋常性白斑ができた場合には、見た目の変化によって心理的、社会的な影響を受けることがあります。カモフラージュメイクを行うことで、外見に関する苦痛を改善することができます。カモフラージュメイクには、色調の差をカバーしやすい白斑専用のカモフラージュ化粧品を使用します。

さまざまな企業がカモフラージュ化粧品を発売していますが、例えば資生堂のパーフェクトカバーファンデーションVV、グラファのダドレスシリーズなどが使われます。特にダドレスは、角質層に浸透後3日間着色可能な成分を使用しているため、洗ったりこすったりしても色が落ちずに使いやすいです。

5-6. その他治療法

非分節型尋常性白斑で、長期にわたって治療に反応しない症例では、脱色素療法を行うことがあります。顔や手など、人目に触れる箇所の50%以上に白斑が生じるようなケースが検討の対象になります。

脱色素療法では、ハイドロキノンモノベンジルエーテルという薬品を使い、皮膚に残った正常色素を脱色します。脱色によって、白斑と正常皮膚とのコントラストをなくすことを目的とするのです。日本での保険適用がない薬品なので、試薬から自家調剤するか輸入して使用します。皮膚の刺激感や皮膚炎といった副作用があること、処置した部分の皮膚の色素が永続的に失われること、意図しない色素再生の可能性もあることなどを、十分に説明してから治療を行います。

他に、メラノサイトを傷害する活性酸素の除去を促進するため、ビタミンCやEの点滴療法・内服などを行うこともあります。

また、アトピー性皮膚炎などにも使われるJAK阻害薬が、尋常性白斑に有効であるという報告もあり、今後の臨床応用が期待されています。

6. 注意点

尋常性白斑は、発症から早期に対応したほうが治療への反応性がよく、拡大を防ぎ、色素が復活しやすいとされています。これはもしかして白斑?と感じることがあれば、早めに受診してください。白斑ができた部分は、メラニン色素による保護がなくなり赤く日焼けしやすいため、衣服で保護し、日焼け止めを塗るなどして対処しましょう。

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